お金の増え方のイメージを感覚的にでも持っているか
この記事を目にしていただいている方は、1年間の運用で100万円を200万円にすることは可能だと思うでしょうか? 私はなかなか難しいのではないか、と思っています。投資初心者にはなおのことです。過去の実績としては確かに存在しますし、投資の世界に「絶対」はないので、もしかすると現在達成している方もいるかもしれませんが、そう多くはないはずです(インターネットでは“1年で資金を確実に倍に増やすノウハウ公開!”という記事をよく見かけますが)。
加えて、1年という期間の中では何が起こるかわかりません。長期間であれば、大きく下げたマーケットも戻してプラスになる可能性がありますが、短期間では何かのニュースの影響で大きく下げて戻らないまま、結果は元本割れという可能性も大いにあります。話はそれますが、メガバンクで担当していたお客さまの中には2007年のサブプライムローン問題直前の価格の高いところで購入、その後10年近くマイナスのまま保有している方がいらっしゃいました。お客さまにとって私は何人目かの担当者でしたが、プラスに転じた時にはお互いほっとしたものです。そんなふうに、長期で持っていると、“もう戻らない”と思っていたものもプラスに転じる可能性も十分にあるのです。
さて話は戻りますが、この時に思ったことが2つあります。1つ目は、お金の増え方・動き方のイメージを持てているか、ということです。現在の預金金利では増やせないことは多くの人が知っています。けれど、年利3%、5%、10%の時はどうでしょうか。私自身もそうですが、物心ついた時、社会人になった時、既に預金金利が1%を割り込む時代に生きてきた世代には想像しづらいものがあります。正確な数字は必要ありませんが、どのような曲線を描くかをイメージできるか、投資であっても年利100%はかなり難しいという感覚を持っているか(年利回り100%はゼロではありません。コロナ禍ではそういうファンドもありました)、もっと簡単に言えばローリスク・ハイリターンの商品はないといった基本的なことを知っているか、は大切です。
2つ目は、もう少し早い段階から資産形成にもいろいろな方法があることを知っていたら、ということです。NISAは2014年からの制度ではありますが、子どもが生まれてから17~18年、少額ずつでも積立投資(場合によっては学資保険でも良いかもしれません)を行っていたら、今よりも増えていたかもしれません。その知識の差により、生活面では貧困層と富裕層の差は広がり、学習面では教育資金不足等により子どもたちの将来の可能性も狭められてしまう可能性があります。お金がある、ということは現実問題、選択肢が広がる、すなわち将来の選択肢も広げられるということにつながるのではないでしょうか。
金融教育はこうした問題を解決する一つのきっかけになるのではないかと信じています。ちなみに、金融教育は投資教育ではないので、日々のお金のやりくりなどもその中に含んでいます。そのために、多くの人が正しい金融教育を受ける機会があることが大切だと思っています。この出来事をきっかけに、学生から社会人まで多くの人に、自分がこれまで培ってきた経験や知識をお伝えしたいと思い、金融教育の道に進むことになりました。