【Aさんのケース】60歳 再雇用勤務(妻はパートタイマー)

・60歳になったときに37年3カ月務めた企業を定年退職し、退職一時金1500万円を受給
・退職一時金のほかに企業型DCにも800万円の残高があり、受け取っていない
・世帯貯蓄3000万円(うち退職一時金1500万円、その他1000万円、妻名義500万円)
・60歳から10年間は生命保険会社の年金支払が年130万円
・生活費(年)350万円、世帯の手取り年収350万円(Aさんの給与とパートタイマーの妻の収入)
・住宅ローンは完済

〈対応案〉
1)再雇用の間は厚生年金保険の被保険者のため、iDeCo口座を新たに申し込み、毎月5000円の掛金拠出をします。
→Aさんの勤続期間に対応した退職所得控除額は2060万円で、企業型DCの資産も一時金で受け取ろうとすると、課税が発生する。
→iDeCoへの掛金拠出で退職所得控除の計算に使う勤続年数を延ばすことが可能。
→生命保険会社の年金支払が69歳で終了するため、70歳でDC資産の給付手続きを行う前提。
→企業型DC800万円は国内株式型投資信託100%を選択しているため、定期的にスイッチングしながら株式投資信託の比率を下げる。
→企業型DCは給付手続き開始までの間に、iDeCoに資産移換し、退職所得控除の勤続年数(60歳までの期間から退職一時金で活用した分を引いた期間にiDeCo拠出5年分を加算)を一本化。
2)退職金を含む預貯金は、新NISAに資産を移していきます。つみたて投資枠で月10万円ずつ年間120万円、成長投資枠でも同様に月20万円ずつ年間240万円を投資信託の購入にあてます。現行NISAと異なり、成長投資枠でもつみたて投資枠の投資信託を活用できます。
→当面の生活費は収入で賄え、生命保険会社の年金支払いもあることからAさんの非課税保有限度額分を5年間で使いきる計算。
→リスクを抑えたバランス型投資信託を選択することで、給与がなくなる65歳以降は運用しながら取り崩すことを想定し、資産寿命を延ばす。

【Bさんのケース】54歳・自営業(妻は派遣契約社員)

・世帯の手取り年収800万円
・世帯貯蓄4000万円(うち遺産相続分3000万円)
・生活費(年)450万円
・住宅ローンの返済額150万円

〈対応案〉
1)BさんはiDeCoに毎月6.8万円を拠出し、64歳まで継続します。
→国民年金の未納期間が4年間あるため、64歳まで国民年金に任意加入することでiDeCoを継続可能。
→年間81.6万円分が所得控除となり節税効果は年間24万4800円(課税所得450万円で試算)、10年間で245万円弱の節税効果がポイント。
→公的年金等控除を活用して年金で受け取ることを想定(退職所得控除はiDeCoへの掛金拠出10年で400万円)。
→運用商品は65歳をターゲットイヤー年にしたバランス型。
2)当面の年間収支はiDeCoの掛金分を差し引いても200万円の余裕があるため、貯蓄はなるべく早く新NISAに移行します。Bさん本人は、つみたて投資枠と成長投資枠のそれぞれに毎月10万円ずつ、バランス型の投資信託を購入します。Bさんの妻は、つみたて投資枠で全世界株式型を毎月10万円ずつ、投資していきます。
→世帯での投資リスクは高めだが、相続分の資産もあることから積立投資で時間分散をしながら投資し、将来的なインフレリスクに対応する。

【Cさんのケース】35歳・フリーランス(独身)

・平均月収30万円(手取り)
・貯蓄500万円
・生活費(年)300万円(経費を除いた金額)
・事務所兼の賃貸マンションに居住
〈対応案〉
1)新NISAのつみたて投資枠に毎月5万円ずつ投資していきます。投資期間が長いことから、米国株式型投資信託を選択します。
→公的年金は国民年金のみのため老後資金も気になるが、家を買うかどうかを検討中のため、必要に応じて現金化ができる制度を選択。
→積立投資を毎日実施できる金融機関もある。その場合は毎日2500円ずつ投資。
→定期的な積立が苦しくなった場合は、いったん投資を休むことも検討。
2)iDeCoは収入が増えて余裕ができてきたら活用します。
→所得控除による節税効果が大きく、老後資金形成のため、という明確な目的をもってiDeCoを。
→退職所得控除はiDeCoの掛金拠出期間を勤続年数として計算するので、早い時期から最低金額の5000円を積み立てておくのも一つの考え方。

【Dさんのケース】27歳・会社員(妻は派遣契約社員)

・年収350万円
・貯蓄80万円
・家賃以外の生活費(年)140万円
・賃貸アパートに居住(家賃 7万円)
〈対応案〉
1)企業型DCのマッチング拠出に毎月3000円ずつ給与天引きで積み立てます。
→お勤め先に企業型DCがありマッチング拠出が可能な場合は給与天引きで活用できるので手軽。マッチング拠出分は、最初からなかったもの、として生活する習慣づけにも。
→投資のハードルを若いうちから下げるのに役立つ。
→運用商品はインデックス型の国内株式型投資信託を選択。
→TOPIXに連動するインデックス型の値動きを定期的に確認することで、株式市場の勉強も可能。
→iDeCoは最低拠出額が5000円のため、少額でスタートする場合はiDeCoよりもマッチング拠出のほうが使い勝手がよい。
2)新NISAでは、毎月1万円をつみたて投資枠で利用し、運用商品はリスクが高めの全世界株式型を選択します。
→無理のない範囲で積立投資を行う。
→長期の投資期間があるので、早めに始めて福利効果を最大限、活用。
→積立投資を毎日実施できる金融機関もある。その場合は毎日500円ずつ投資。
→貯蓄は月収の約3カ月分を確保しているので、病気やけがで働けない場合も、ある程度、対応可能。
3)これから先のライフイベント(住宅購入など)では、NISAから引き出すことも想定します。
→新NISAから引き出して活用すると、非課税保有限度額が復活するので、収入や生活費を考えながらNISAへの投資額を決定。
→将来的には老後資産形成のためにマッチング拠出の増額やiDeCoの活用も検討。