雇用統計から見る米国経済のこれから

同レポートによると、「雇用統計は堅調ながらも労働需要の後退を示唆する結果が見込まれる」ということです。

これまで人手不足で悲鳴を上げていた米国の労働市場ですが、それはパンデミックに伴う各種給付金などによって家計部門が潤い、働かなくても生活できる状況が続いていたからと考えられます。

しかし、すでに経済は正常化へと向かっており、これから先、給付金の類いは期待できません。だとしたら、いよいよ働く必要があります。その証拠に、米国の労働参加率が、徐々に上昇してきました。

労働参加率は、生産年齢人口に占める「就業者+失業者」の割合です。10月時点における米国の就業者数は、9月比で34万8000人の減少。対して失業者は14万6000人増加しました。失業者の定義は、職探しをしていることが条件になります。はなから働くことを諦めている人は、失業者にカウントされません。

これらの数字から分かるのは、職探しをしている人が、いよいよ増えてきたということです。

コロナ後のインフレにも関わらず、米国の個人消費は旺盛と言われてきましたが、給付金の類いが底を尽き、職探しをする人が増える一方、労働需要が後退するとなったら、これまで旺盛だった個人消費が落ち込むはずです。米国のGDPのうち約7割は個人消費なので、その落ち込みがひどくなると、米国の景気は減速感が強まっていくでしょう。

そうなれば、米国の長期金利はピークを付けたという認識が広まり、FRBもFFレートの誘導目標をさらに引き上げられなくなるはずです。実際、一時は4.996%まで上昇した米国10年国債の利回りは、11月3日時点で4.484%まで低下しました。

米国経済の行方は日本にとって重要!

これからの米国経済は、雇用環境の悪化と個人消費の低迷によって、景気の減速感が強まる恐れはあるものの、「不景気の株高」という言葉もあります。

不景気になると金利が低下し、いずれは個人消費の回復や、企業の設備投資意欲の高まりで景気が回復し、企業業績も改善へと向かう。そこまでを織り込んだうえで、株式が買われるというケースは少なくありません。

そして、何よりも肝心なのは、米国と日本の株価が連動していることです。米国の株価が、再び最高値更新を目指して上昇傾向をたどれば、日本の株価にもポジティブな要因になります。

確かに日本の長期金利も、ひところに比べれば上昇していますが、それでも10年国債利回りで1%前後ですから、高金利とは言えませんし、この程度の金利上昇であれば、日本経済に大きなダメージが及ぶことはないでしょう。それよりも、米国における長期金利低下と株高が、日本株に対してポジティブな影響を及ぼす可能性が高いと考えられます。

米国景気の行方とFRBの金融政策は、これからの日本の株価を見るうえで、重要な要素になってくるでしょう。