手数料の引き下げで起きることとは?

このように、さまざまな金融サービスの手数料が下がってきたわけですが、これを手放しで喜んでも良いのでしょうか。

なぜ手数料を取るのかというと、そのサービスを提供することの対価であり、サービスの提供者からすれば、徴収した手数料によって雇用を確保するのと同時に、サービスのクオリティーを高めるための投資を行っています。

確かに、「手数料の料率はいくらが妥当なのか」という点は非常に不透明であり、利用者からすれば「不当に高い手数料を取られているのではないか」といった疑心暗鬼を生む余地があるのは事実です。だから、「安ければ安いほどいい」的な議論が出てくるのだとは思いますが、手数料競争が行き着くところまで行き着くと、別の歪みが生じる危険性があります。

たとえばFXの売買手数料ですが、限界値とも言える無料が普通になったことで何が起きたのかというと、カバー取引をしないFX会社が増えました。カバー取引というのは、たとえば投資家からドル買いの注文を受けた場合、FX会社はドル売りのポジションを持つことになる一方で、ドル買いのポジションも持つことです。

FX会社がドル売りのポジションを持ったままだと、ドル高・円安が進むにつれて含み損を抱えることになります。そのリスクを回避するため、ドル高・円安が利益につながるドル買いのポジションを併せ持つのです。

ただ、一般的にFXを行っている投資家は3割が損をすると言われています。その確率からすれば、投資家からの注文を受けてカバー取引をしなければ、7割の確率でFX会社が勝つことになります。

結果、カバー取引をしなければ、投資家が勝手に損をするので、手数料収入よりも大きな利益が生じるという理屈になるのですが、それはあくまでも理屈の上での話です。

時々、為替レートはものすごい幅で動くことがあります。そのような時、カバー取引を行わないまま、投資家から受けた注文で生じるポジションを持ち続けていると、FX会社が大損を被ることになります。下手をすると、その損失が理由で破綻する恐れもあります。