日本企業は一流の「バイプレーヤー」たれ

――最後にマクロ的視点から伺いたいのですが、GAFAM(グーグル=上場しているのは親会社のアルファベット、アマゾン、フェイスブック=現在メタ、アップル、マイクロソフト)といったテック巨人たちやテスラなどEV(電気自動車)専業メーカーが跋扈(ばっこ)する世界経済の中で日本企業が生き残り、成長していくためのポイントは何でしょうか。

黒子役あるいは舞台のバイプレーヤーとして欠かせない存在であり続けることでしょう。半導体は既にある程度、勝負がついてしまっているものの、チップ本体ではなく、製造装置や部材で世界トップクラスであり続けること。EVも出遅れてしまい、完成車メーカーとしては大変厳しい戦いを強いられる。やはりエアバッグやブレーキシステムといった部品メーカーとして世界トップをキープすべきでしょう。

ただ、日本の技術力は高いんです。象徴的な例はGX(グリーントランスフォーメーション)で、再生可能エネルギーの技術などは卓越したものを持っています。

大事なのはそれを輸出して“ビジネス化”すること。この“ビジネス力”の強化も今後の課題といえるでしょう。とはいえ、これは単独の企業で対応する話ではなく、行政や政治が一緒になって取り組むべき課題でもあります。

いずれにしても、そういった企業の技術力・ビジネス力を担うのは「人材」です。人材を集め、成果を出してもらうには「賃金」が欠かせませんし、最後は人材を生み出す「教育」も重要です。

こういったことを経営者自身がどこまで自覚して、企業を再生させられるか。そこが、日本にとって本当の意味での分水嶺だと思います。

 

ニッセイ基礎研究所
金融研究部 主席研究員 チーフ株式ストラテジスト
井出 真吾氏

 

1993年東京工業大学卒業、日本生命保険入社。1999年ニッセイ基礎研究所、2023年より現職。専門は株式市場、株式投資、マクロ経済。新聞・テレビ等メディアへの登場も多数。著書に「40代から始める 攻めと守りの資産形成」「本音の株式投資」、「株式投資 長期上昇の波に乗れ!」(いずれも日本経済新聞出版社)等。