銀行が変化していくなか、私たちが見つめ直すべきこと

――三井住友銀行を傘下に収める三井住友フィナンシャルグループの名前が出ました。ほかのメガバンクの動きはどう見ていますか? 

三菱UFJフィナンシャル・グループの亀沢宏規社長が理系出身なこともあって、三菱UFJ銀行はITやAIを活用していこうというカラーが出ていると思います。BaaS事業として、NTTドコモやリクルートと連携しているのですが※3、銀行機能をホワイトラベル化、すなわちどんな企業でも埋め込めるものを作って、パートナー企業を増やしていく戦略のようです。自前主義と一番距離を置いているのかもしれません。

そしてみずほ銀行。みずほフィナンシャルグループの木原正裕社長が住宅ローン戦略の見直しを宣言して話題になりましたよね。リテールと距離を置かないまでも“自然体”でいき、中堅企業やベンチャーの資金調達に注力していく点が印象的です。

もちろんDX化や、非金融との接近など共通する流れもある一方、3メガバンクそれぞれ個性を出してきて、非常に面白い時代になってきたと思います。

※3編集部注:NTTドコモのデジタル口座サービス「dスマートバンク」と、リクルートのアルバイト向けアプリ「シフトボード」のこと。

――「どこの銀行も似たり寄ったり」よりも、“カラー”があったほうが、私たち生活者にとっても“自分に合った銀行”を選びやすくなりますよね。これから、口座を作る人にとって、“自分に合う銀行選び”のアドバイスをお願いします。

おそらく1つはリアル店舗のある銀行、もう1つは手数料や利息が有利なネット専業銀行の“2口座持ち”がスタンダードになっていくのではないかと思いますが、結局は「自分が銀行をどう使いたいか」が重要なのではないでしょうか。

例えば、私は職業柄、学会の会費や書籍の購入費などを送金する機会が多いので、送金手数料無料の回数で銀行を選んでいます。お年を召した方だと、やはり自宅から行きやすい店舗のある銀行が安心かもしれませんし、ほぼ手続きはネットオンリーだという方は、ネットやアプリの操作性や機能性も各銀行で差がついていますから、その観点を中心に選ぶことになるでしょう。

銀行が非常に変化してきている今、生活者の方も「自分はどう銀行と付き合い、活用しようか」と見つめ直すタイミングが来ているのではないでしょうか。

 

 
 

渡邊隆彦氏・専修大学商学部教授
三菱UFJ銀行(現)にて主に市場業務、投資銀行業務を担当後、三菱UFJフィナンシャル・グループ コンプライアンス統括部長、国際企画部部長を歴任。2013年4月より現職。日本郵政「グループコンダクト向上委員会」委員等も務める。東京大学工学部卒、マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院修了。