信託報酬理解度クイズにトライ!

ここで、信託報酬の理解度をチェックするために、1つクイズを出題しよう。

実在する以下2本の投資信託は、AがTOPIX(東証株価指数)に連動した投資成果を目指すインデックス型で、BがTOPIXをベンチマークに掲げたアクティブ型である。いずれも、販売手数料は無料(ノーロード)であると仮定した場合、信託報酬控除後の運用成績がよかったのは、AとBどちらのファンドか。なお、ここでいう「騰落率」は分配金再投資後のトータルリターンを指す。(データはいずれも2023年7月末時点)。

【A】 たわらノーロード TOPIX
1年間騰落率(トータルリターン):+22.75%
信託報酬(税込):0.187%

【B】 One国内株オープン
1年間騰落率(トータルリターン):+23.86%
信託報酬(税込):1.760%

 

答え:【B】One国内株オープン

運用成績よりも先に信託報酬の値に目がいってしまった人、直感的に信託報酬の低い【A】を選択してしまった人はくれぐれも注意してほしい。

インデックス型の「たわらノーロード TOPIX」のほうが信託報酬ははるかに低いが、その10倍近いコストをかけて運用した「One国内株オープン」のほうが、最終的に高いリターンをあげることができた。繰り返しになるが、騰落率算出の元となる投資信託の基準価額には、すでに信託報酬が反映されており、投資家が別途手数料を徴収されることはない。投資信託の運用成績は、信託報酬控除後の値であり、上記のクイズの場合、「1年間騰落率」として示されている値が全てである。

実は、上記のクイズは、既につみたてNISAで投資信託を積み立てているという投資経験者でも間違えることが多い。同一のベンチマークを掲げるインデックス型、つまり、同じ性質のファンドであれば、信託報酬の高低で比較を行っても構わない。しかし、インデックス型とアクティブ型との比較や、同じインデックス型でも異なるベンチマークのファンドを比較する場合、信託報酬だけでファンドの優劣を判断することはできない。

ちなみに、先のクイズで取り上げた2ファンドの3年間騰落率を確認すると、「たわらノーロード TOPIX」が65.93%、「One国内株オープン」が73.77%で、1年間騰落率よりも大きい、約8ポイントの差が開いている。このように「信託報酬は低い方が良い」という都合の良い情報の切り取りは、長い目で見れば機会損失につながる。

重要なのは、単純な信託報酬の高低ではなく、「適正な水準かどうか」ということだ。冒頭の総経費率の公表が始まると、ファンド間のコストの比較はしやすくなる。しかし、その水準が妥当かどうかを判断することはやはり難しい。

次回は、総経費率についてもう少し詳しく掘り下げるとともに、信託報酬の適正な水準についても見ていく。