婚姻率の低下が課題…ブライダル業界で高まるM&A機運

コロナによる危機からの脱却が進むブライダル業界ですが、長期的には婚姻率の低下から持続的な成長を危ぶむ声も聞かれます。婚姻件数は1972年(約110万組)をピークに減少の一途をたどっており、2021年は辛うじて50万組をキープしたにすぎません。50歳時点の未婚率も、女性は約17.8%、男性は約28.3%に達しました(2020年)。

【婚姻件数】

厚生労働省 人口動態統計(2021年)より著者作成

【50歳時点の未婚割合】

内閣府 少子化社会対策白書(2022年)より著者作成

ブライダル事業は地代や人件費などの割合が比較的大きく、またリピートがほぼない商品性から広告宣伝費も継続的に発生する傾向にあります。これら固定費が大きい企業はある程度の売り上げを持たなければ損益分岐点を下回ることとなりますが、ブライダル業界は競合が多く、最大手のテイクアンドギヴ・ニーズでもシェアは5%ほどしかありません。1社あたりの売上高が大きくなりにくく、利益率の低さにつながっていると指摘されています。

婚姻率の低下が続けばさらに売り上げが減少し、事業を続けられない企業も出てくるかもしれません。一方で、固定費が大きく変動費が小さい企業は、売り上げが増加すれば利益率も大きくなりやすく、規模の拡大を狙うブライダル企業は少なくないでしょう。

これらから、ブライダル業界は企業同士の再編が進みやすい構造となっているといえます。今後は業界内でM&Aの発表が増えるかもしれません。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。