日本では、これから定年を迎える女性が増えると予想されています。

こうした女性たちが“明るい定年後”を迎えるには――? 長寿化とライフスタイルの多様化が加速する日本において、今後、ますます重要度が増すであろうこの問いにさまざまなデータとともにヒントを送るのが、話題の書籍『女性と定年』です。

今回は特別に、同書の第1章『これから増える定年女性』、第2章『女性の定年とお金』の一部を公開します(全3回)。

●第2回:事務職は倍率100倍にも…定年女性を待ち受ける「仕事探しのシビアな実情」

※本稿は『女性と定年』(小島明子著・金融財政事情研究会)の一部を再編集したものです。

多様化する配偶者・パートナーとの生活

2014年に出版された杉山由美子氏の著書※1では、卒婚という言葉が話題になりました。「卒婚」とは結婚を卒業する、という意味ですが、離婚はせずに、子どもの独立や夫の定年退職を機に、結婚生活は続けながらも、お互いが自由な生活をするという形になります。定年を迎えた女性の中には、経済力もあり、定年後の再就職では、夫よりも活躍する女性が増えるかもしれません。コミュニティや生活のリズムも変わり、今までの生活スタイルを続けることにこだわらない女性が増えることで、夫婦の在り方も変化していくと考えます。

※1 杉山由美子『卒婚のススメ 人生を変える新しい夫婦のカタチ』(静山社文庫、2014年)

実際、長年連れ添った夫婦ほど、離婚の件数は増加しているという事実があります。厚生労働省※2によれば、2021年の離婚件数は18万4386件で、同居期間が5年未満で5万4510件と約3分の1を占め、結婚生活への見切りが早いことが読み取れます。加えて、1985年から比べると、同居期間が20年以上の離婚は、約2倍近くまで増えているのです。

※2 厚生労働省「令和3 年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」

●図表1 同居期間別にみた離婚件数の年次推移

注:同居期間不詳は含まない。
出所:厚生労働省「令和3 年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況」をもとに日本総合研究所作成

パートナーエージェント※3によれば、離婚に至った理由として、最も多いのが「性格が合わない」(55.6%)を挙げています。最近では、主に結婚年数が長くなった夫婦において、夫の言動によるストレスで更年期障害の悪化等をはじめとした体調不良を訴える妻が多いことから、石蔵文信氏が「夫源病」と命名しています。共働きが増えているにもかかわらず、女性の家事や子育ての負担は減っていません。フルタイムの仕事をこなしながら、家事や子育てまでこなさなければならず、その上、更年期障害や夫への気遣いなどから、ストレスを抱えている女性は多いと感じます。

※3 パートナーエージェント「「結婚観」に関するアンケート調査」

また、結婚のスタイルも多様化しており、別居婚や週末婚は、男性よりも女性のほうが関心が高いことが明らかとなっています。

●図表2 「結婚観」に関するアンケート調査

出所:パートナーエージェント

実際、年齢を経てから、住まいを分けることで円滑な関係を築いている夫婦の話も耳にするようになりました。「夫源病」の予防はもちろんのこと、女性の経済力が向上し、健康寿命が延びることが予想される中で、夫婦の生活の在り方も、お互いの事情に応じて多様化していくことが求められているのではないでしょうか。さらに、社会としても固定的価値観にとらわれずに、多様化を許容する寛容さがあってもよいと考えます。

国立社会保障・人口問題研究所※4によれば、2020年時点で50〜59歳の男性の未婚率は、28.25%(1990年時点5.57%)、女性は17.81%(1990年時点4.33%)であり、1990年時点と比べると、約5倍近くまで増加しています。今まで仕事に専念してきた未婚女性の中には、入籍まではしなくても、将来を支え合える「友達以上恋人未満」のパートナーを見付けて、一緒に暮らしたり、住まいは異なっても定期的にお互いの家を行き来して過ごす、というライフスタイルも今後は増えてくるのではないでしょうか。

※4 国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集(2022年版)」