なぜグロース株は金利上昇で値下がりしやすいのか

金利の上昇でアメリカ株式市場は全体的に軟調な展開が続きましたが、特にグロース株(成長株)はバリュー株(割安株)より大きく下落する傾向にありました。アメリカが利上げを実施した2022年3月からのマーケットを見ると、明らかにグロース株価指数の方がバリュー株価指数より大きく値下がりしています。

【S&Pグロース指数とS&Pバリュー指数の推移(2022年2月末=100)】

S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスおよびInvesting.comより著者作成

なぜ金利上昇下でグロース株はバリュー株より大きく下落したのでしょうか。その理由は「益回り(株式益回り)」の差にあると考えられています。

益回りとは株価に対する利益率のことで、1株純利益を株価で割って算出されます。PER(株価収益率)とは逆数の関係にあり、例えばPERが20倍なら益回りは5%、PERが100倍なら1%です。従って、PERが高い傾向にあるグロース株は益回りが低く、反対にPERが低い傾向にあるバリュー株は益回りが高くなりやすいといえます。

そして純利益は株主のリターンの源泉であることを踏まえれば、益回りは株式投資で期待できる利回りを表すことになります。これは債券投資における債券利回りに相当することから、益回りは債券利回りとよく比較されます。

リスクの差から、益回りは債券利回りより大きくなることが一般的ですが、グロース株は益回りが低い傾向にあるため、バリュー株ほど大きな差とはならないでしょう。金利が上昇すると債券利回りも上昇するため、場合によっては利回りが債券に追いつかれるグロース株も出てくるかもしれません。

同じ利回りなら、リスクの高い株式より債券で運用する方が効率的です。このような思惑から金利が上昇すると株式の売りが誘発されやすく、特に益回りが低いグロース株でその傾向が強くなるといえます。金利の上昇が予想される際はこの仕組みを思い出し、株式投資に生かしてみてください。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。