やはり高い日本人の現預金の比率

やや旧聞に属する話ですが、日銀が四半期ベースで公表している「資金循環統計」によると、2022年12月末の個人金融資産の総額は2023兆円で、このうち現金・預金の占める比率が、55.2%の1116兆円であることが分かりました。

四半期ベースの数字を抽出し、それを前年同期比で増減率を追っていくと、2001年から2008年くらいまでは、大半の期で高くても1.5%前後、多くは0.5%前後の増加率でしたが、2009年以降は1.5%程度から2%台の後半が続いており、新型コロナウイルスの蔓延で各種補助金・助成金の類が給付された2020年以降は、5%後半まで増加率が跳ね上がる期も見られました。直近はやや前年同期比の増加率は低下しつつありますが、それでも2022年12月末時点の現金・預金は、前年同期比で2.107%増となっています。

果たして、銀行にとって預金の増加は嬉しいことなのでしょうか。

かつて預金が大歓迎されていたワケ

あくまでも私の感覚ベースの話になりますが、今から40年近く昔の銀行では、預金をしてくれるお客様は、歓迎されました。銀行の窓口で預金をすると、ポケットティッシュやサランラップといった粗品がもらえたのです。

振り返ってみれば、今から40年前といえば1980年代。日本経済はバブルの絶頂期に向かう時期です。そして、それより以前の1960年代、1970年代は、日本が高度経済成長期の真最中でした。人口もどんどん増加し、それによる人口ボーナスで、国内消費がどんどん活性化されていった時代でもあります。

消費が活性化すると、企業はたくさん設備投資をして、その分製品を作れるように増産体制を敷いていきます。そして、それには相当の資金が必要になります。多くの企業は、自己資金のみでは賄い切れないため、銀行から融資を受けるようになります。

この融資のための原資になるのが、預金です。銀行は預金で大勢の個人からお金を集め、それを企業融資に回します。そして、融資の適用利率と預金利率との金利差が、銀行が受け取る利益になります。

高度経済成長期からバブル経済にかけて、銀行で預金する人たちが歓迎されたのは、どれだけ預金を集めても足りないくらい貸し出しが多かったからです。もし預金が集まらなければ、貸出先がたくさんあっても貸し出すことができません。

それは銀行にとって収益機会を逃すことになりますから、粗品のコストを負担してでも、たくさんの預金を集めたがったのです。