移換元企業担当者の注意点

S社のDC担当者は、Aさんの資格喪失手続きを早め(6月中)に実施しました。そのため、Aさんの「確定拠出年金 加入者資格喪失手続完了通知書」は、7月の初旬に届きました。加入者の資格喪失手続きは、将来の日付でも可能です。退職日が決定した時点で手続きをしておくと、「確定拠出年金 加入者資格喪失手続完了通知書」が届く時期(資格喪失日から1週間程度)をAさん本人にも伝えられるので、書類の紛失を防ぐことにもなります。

ただし、留意点もあります。資格喪失手続きが行われると、AさんはS社の企業型DC資産のスイッチングができなくなります。

移換先企業担当者の注意点

N社のDC担当者は、1)の場合は移換を希望するかどうかを確認し、2)の場合は移換手続きが必須となるため、「個人別管理資産移換依頼書」を渡して記載を促します。入社説明の際に「確定拠出年金 加入者資格喪失手続完了通知書」を持参してもらうと、説明時点で記載が終了するのでスムーズです。

「個人別管理資産移換依頼書」は、N社の担当部署から記録関連運営管理機関に提出します。仮にAさんの入社が2カ月遅く、自動移換になってしまっていても、「個人別管理資産移換依頼書」を提出することで、DC資産の移換手続きが可能です。

ポータビリティ(資産移換)の課題

資産移換は「個人別管理資産移換依頼書」を移換先企業から記録関連運営管理機関に提出することで終了しますが、用紙を郵送する必要があるため、時間がかかります。

一方で、自動移換を防止する仕組みとしての「自動移換前移換」や「自動移換後移換」については、何ら手続きをすることなく、資産が移ってきます。カナ氏名、生年月日、基礎年金番号などの情報が一致する必要がありますが、そうした方法が可能であるのならば、用紙による手続きではなくオンライン手続きなどの開発余地があるのではないでしょうか。

DC制度がスタートした当初は、銀行口座やクレジットカード等の作成に用紙を提出することが一般的でしたが、最近ではオンラインで出来ることが増えました。それに対して、移換は用紙の提出に限定されたままで、変化がないといえます。