金(ゴールド)の価格は約15年間、上昇傾向を維持している。2023年は値上がりがとくに顕著で、3月13日にはニューヨーク先物市場で一時、前営業日の終値から3%も高騰した。

インフレ下で市場が不安定な中、なぜ金投資は人気を集めるのか。この記事では金投資のメリットや株式投資との違いについて、金価格上昇の背景を交えながら解説する。

金投資の主なメリット3つとは?

そもそも金とは、主に宝飾品に使われている貴金属だ。代表的な産出国には中国やオーストラリア、ロシアなどが挙げられる。

供給量の大半は宝飾品に用いられるが、全体の約4分の1は投資用の地金やコインとしても流通しており、金は投資可能な資産でもある。なお、金は2023年2月時点で1グラムあたり平均7,990円で取引されている。

金投資は「コモディティ」投資に分類される。コモディティとは「商品」を意味する英単語で、投資では商品先物市場で取引される対象を指す。金のほか、原油やガソリンなどのエネルギー、トウモロコシや大豆といった穀物もコモディティに含まれる。

金をはじめとしたコモディティ投資には、主に3つのメリットがある。

・無価値になりにくい
・インフレ対策
・分散効果の向上

1つ目のメリットは、無価値となる可能性が考えにくい点だ。コモディティ投資では前述の通り、貴金属やエネルギーなどの実物資産に投資する。そのため、デフォルトや倒産の恐れがある金融資産とは異なり、価値がゼロになりにくい。とくに金は「無国籍通貨」とも呼ばれ、世界共通でその価値を認められている。値崩れリスクの低さ、信頼性の高さが金投資の魅力といえるだろう。

2つ目はインフレ対策。物価が上がると、現金の価値は相対的に低くなっていく。また、資産運用でも、物価の上昇率以上のリターンがなければ資産は目減りしてしまう。その点、金などのコモディティは物価に連動して値動きする傾向にあるため、インフレに強いとされている。

3つ目のメリットは、分散効果の向上だ。投資では値動きの要因が異なる組み合わせほど、リスク抑制効果が高いとされる。コモディティ全体にいえることだが、資産価格は天候や社会情勢に大きく影響を受けやすい。企業の経営や市場の動きに左右される株式や債券とは値動きのおもな要因が異なるため、ポートフォリオに組み込むことでより高い分散効果が期待できるのだ。

とくに2023年3月はアメリカの銀行が相次いで経営破綻し、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げを懸念する声が市場で高まった。金価格高騰の一因には、投資家の不安を受けたリスク回避の金買い増加もあったと考えられる。

さらに、アメリカとの溝を深める中国やロシアが保有資産をドルから金に切り替える動きもある。各国の金準備比率の上昇に伴い、今後も金価格高騰は続くと見られている。