今注目の書籍の一部を公開して読みどころを紹介するシリーズ。今回は公的年金・私的年金等の受取方法および税制などの「出口戦略」について解説した谷内陽一氏の『WPP シン・年金受給戦略』の第1章を特別に公開します(全3回/本記事は第3回)。著者本人が同書を解説する無料セミナー情報も!

●第2回(「60歳で定年して、企業年金をもらう」は過去の話に…令和の年金受給戦略は“WPP” )を読む

※本記事は谷内陽一著『WPP シン・年金受給戦略』(中央経済社)から一部を抜粋・再編集したものです。

WPPモデルにも課題はある!?

これまで述べたとおり、少子高齢化や低金利・マイナス金利などの環境変化に見舞われている現代社会において、WPPモデルは「人生100年時代」に備える上で有効な手法だと著者は考えます。

しかし、世の中に完全無欠なものがないのと同様に、WPPモデルもまた決して完全無欠ではありません。人によっては、WPPモデルに次のような不安を感じる方もいるのではないでしょうか。

①就労延長の課題 ~働き口はあるのか、いつまで働けるのか~

「働けるうちはなるべく長く働こう」と主張すると、決まって「働き口なんてそんな簡単には見つからない!」だの「死ぬまで働かせる気か!」さらには「公的年金の破綻をごまかす政府の陰謀だ!」などという批判を浴びます。また、働きたくても事情があって働けない方や、働くこと自体に苦痛を感じる方もいらっしゃるので、正面きって「働けるうちは働け」と主張しづらい面もあります。

しかし、第2回(「60歳で定年して、企業年金をもらう」は過去の話に…令和の年金受給戦略は“WWP”)でも述べたとおり、高齢期も長く働くことは、さまざまな面で老後収入の増加にプラスに作用します。また、高齢期は現役期と同じような働き方をする必要は必ずしもありません(詳細は、第3章で解説します)。

②私的年金等の課題 ~投資や資産運用は敷居が高い!?~

近年、「公的年金だけでは心もとないから、自助努力で備えなければ!」と考える方は増えています。金融機関や金融の専門家からの、金融商品・サービスを利用して「資産寿命を延ばそう」という提案が近年増えています。こうした風潮を受けて、マネー雑誌を買い漁ったり、金融機関に相談しに出かけようとする気の早い方もいるかもしれません。

しかし、投資や資産運用には価格変動などの不確実性がつきものです。また、高齢になればなるほど、資産管理に係る判断・認知能力の低下という新たな問題が生じます。そんな中、老後に向けてどのように準備すればよいのでしょうか。

もしあなたが会社員や公務員ならば、まずは勤務先にある制度をフル活用するところから始めましょう。最初にチェックすべきは、退職金(退職一時金)や企業年金などの「退職給付制度」です。また、勤務先が窓口となって加入する制度・商品(財形年金貯蓄、団体年金保険、拠出型企業年金保険など)の有無を確認しましょう。これらの制度・商品は、個人消費者向けのものよりも手数料やサービスの面で優遇されているのが一般的です。

次に、そもそも勤務先に何の制度もない(or制度はあるが不十分)会社員や自営業・フリーランスの方は、税制優遇が手厚い制度・商品を活用するところから始めましょう。わが国ではここ10年の間に、税制優遇の手厚い資産形成手段が相次いで創設・拡充されています。また、自営業・フリーランスなど公的年金が1階部分(国民年金)のみの方には、国民年金に上乗せして備えるための制度が複数準備されています。

私的年金(企業年金・個人年金)および各種資産形成手段の概要は第2章で、私的年金の受取り方(年金・一時金)のポイントは第5章でそれぞれ詳しく解説します。