経済は足が遅く、投資は早い
経済と投資が同じではないとはいっても、特大の経済ショック(悪い出来事)が起きれば、さすがに株式市場も暴落することがあります。2008年に米国で起こり、世界の経済と株式市場を巻き込んだリーマンショックがそうです。
米国の大手銀行や証券会社が次々と破産した結果、その余波で世界中の経済がどん底に突き落とされました。世界各国の株価も、およそ1年半をかけて半分以下になってしまいました。このように、経済が極端に崩壊してしまうと株式投資も大きな打撃を受けます。
ここで1つ、大事なことがあります。政府や中央銀行は人々の生活や雇用(仕事)を守るための対策を行ない、経済を復活させようと努力します。この時、経済よりも株式市場のほうに対策の効き目が早くまわり、先に立ち直るということです。
経済が壊れてしまうと、仕事を失う人が出ます。仕事がなくなった人は、何とか生活していかなければいけないので他の仕事を探したり、そのために引っ越したりすることがあります。お客が来なくなったお店は、店じまいをして在庫や店の備品を売ってしまいます。
ここで、政府の対策が効いて経済が復活を始めても、一度失われてしまった働き手や施設がすぐ元通りになるわけではありません。いったん動きが止まった経済を再起動して、勢いに乗せていくには、それなりの時間がかかります。
一方、株式投資はどうでしょうか。中央銀行の対策によってお金が借りやすくなれば、投資家はお金を借りてガンガン株を買います。クリックでいくらでもお金を動かすことができる投資は、経済に比べて復活のスピードがずいぶん早いのです。
リーマンショックの時には、米国の失業率が経済ショック前の低さに戻るまで10年近くかかりました。これに対して、米国株は、5年半でショック前の高値に戻りました。結局、リーマンショックのどん底から世界の株価は約11年で4倍になりましたが、世界の経済は同じ期間に4割程度成長しただけです。
ここまでの経済と投資の関係を私たちの投資に活かすとしたら、どう考えたらよいでしょうか。
株価は投資家の心理に左右され、短い期間で大きく動くという特徴を利用するなら、他の投資家の心理を読んですばやく売買すればもうけられるかもしれません。ただし、他の投資家に裏をかかれれば、あなたが負ける側になってしまいます。
経済とは関係ないので投資の行く先は読めない、長期でお金が増えればいいと考える人は、コツコツと積み立て投資をしていくのがよいでしょう。余裕があれば、経済ショックで株価が大きく下がった時に追加で買うと、より投資成績が良くなるでしょう。
『こどもと一緒に読む投資の話』
日野秀規 著
発行所 ぱる出版
定価 1,540円(税込)