A24最大のヒット作『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
3月12日(現地時間)に授賞式が開催される第95回アカデミー賞を独占するといわれている作品がある。中国人の主婦がマルチバースで大活躍するアクション映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(通称:エブエブ)だ。
主人公は家族でコインランドリーを経営する中国系移民の女性。ある時、別の宇宙からやってきた夫に、複数の宇宙に存在する「別の自分たち」の存在を教えられる。歌手、料理人、カンフーマスター…ほかの宇宙で得たスキルで、彼女は巨大な悪と戦うことになる。
3月3日(金) TOHOシネマズ日比谷 他 全国ロードショー
配給:ギャガ © 2022 A24 Distribution, LLC. All Rights Reserved.
すでにゴールデングローブ賞で主演女優賞、助演男優賞を受賞、アカデミー賞では最多11部門にノミネートされている本作品。製作したのは、今アメリカで最も話題の映画スタジオ、A24(エートゥエンティフォー)だ。映画ファンにも注目されるこのスタジオ、一体どんな存在なのだろうか。
ヒット連発の映画スタジオ・A24ってどんな会社?
A24は2012年に設立された比較的新興の独立系プロダクションだ。自らのプロダクションで映画を製作すると共に、出資、配給も行っている。創立当初から個性的な作品づくりを評価されていたが、『ルーム』『エクスマキナ』(2015)などの配給権を得たことでビジネス的な成功を収める。さらに2016年にはアカデミー作品賞を受賞した『ムーンライト』で批評家の評価も獲得した。
才能ある新人を発掘し、インディペンデントの映画会社らしいエッジの効いた作品を次々と手がけたことで、目の肥えたマニアにも支持された。プロモーション時の斬新なアートワークも話題で、日本でもヒットした『ミッドサマー』(2019)などは、そのキービジュアルを覚えている人も多いのではないだろうか。
『ミッドサマー』は『へレディタリー/継承』(2018)のアリ・アスター監督が手掛けた作品で、実はかなり不気味なフォークロア・ホラーだ。しかし、アーティスティックなビジュアルを前面に押し出すことで、若い層の興味も上手く喚起することができた。日本でもこの作品で「一味違った作品を作るプロダクション」というイメージを確立できたのではないかと思う。