2022年のブランドインテグレーション評価で「ESGの観点からエンゲージメント活動に積極的」という項目の評価が、本部で急落したのは、金融庁の厳しい姿勢を受けて、販売会社の間でも運用会社のESGの体制について懐疑的な見方が広がったのかもしれない。しかし、支店の評価は「ESGの観点からエンゲージメント活動に積極的」という項目への評価は前年31.9%から今年34.1%と若干高くなっている。これは、ESG投信について顧客のニーズが高まる中で、ESG関連についてレポートやセミナー等で情報発信してくれる運用会社の姿勢を評価したものだろう。

今後、一段と厳しくなる「ガバナンス」への要求

金融庁がESG投信について、監督指針の変更を決めたことは、「プリンシプル・ベースの監督」から「ルール・ベースの監督」への変更につながる動きにもみえる。そもそも金融行政は、「ルール・ベースの監督」が基本姿勢だった。「箸の上げ下げまで」といわれるくらいに、金融機関の経営については事細かなルールが作られ、文章化されて順守することが求められていた。しかし、2007年に金融庁長官に就任した佐藤隆文氏は、「ベター・レギュレーション」という考え方を導入し、「ルール・ベースの監督とプリンシプル・ベースの監督の最適な組み合わせ」を監督指針に掲げた。それまでが「ルール・ベース」の監督だったため、それ以降は「プリンシプル・ベース」が意識され、基本方針を示し、対話などによって望ましい経営を徹底させるやり方が取り入れられた。

ESG投信に関する監督指針の変更は、「ルール・ベース」への揺り戻しを感じさせる。金融機関は多くのルールに縛られた時代が続いたように、非常に厳しいガバナンスが求められてきた。それが、ネット金融の隆盛などによって、金融以外の業態から金融事業に進出する企業も現れ、様々な常識が入ってきている。ガバナンスに緩みがあると判断された場合には「プリンシプル・ベース」で自主性に委ねられていた部分にも、ルールが適用されるようになるのだろうか。ESG投信に関する監督指針の変更は、「ルール・ベースの監督とプリンシプル・ベースの監督の最適な組み合わせ」に向けた調整の一環といえそうだ。