投資信託をはじめ金融商品の販売関連業務に携わる読者を持つ金融リテール専門誌『Ma-Do』が実施した「運用会社ブランドインテグレーション評価2022」で、販売会社が運用会社を評価する際に、「ガバナンス」に関して一段とシビアになっていることが分かった。2022年の回答では、「受益者本位の商品組成や効率的な運用」という項目について、販売会社の本部で前年55.5%が今年67.1%に急上昇した。顧客本位の運用がますます求められることに加え、同じ本部の回答にあったように「ESGの観点からエンゲージメント活動に積極的」という項目が前年33.6%から今年23.8%に落ちていことを併せて考えると、いわゆる「ESGウォッシング(実態のないESG)」で金融庁が厳しい態度を取ったことが、ガバナンスへの評価に影響している側面もありそうだ。
「運用会社ブランドインテグレーション評価」は、投信販売会社が運用会社を評価する調査で、運用会社について「運用力」「商品開発力・企画力」「営業担当者・研修担当者の質」「サポート力」「ブランド力」「ガバナンス」の6つの軸で評価してもらい、得点順にランキングした。2022年調査は9月~10月にWEBで実施し、国内外の運用会社36社を評価の対象とし、310件の回答を得た。
「ESGファンド」が人気を集める中で…
販売会社にとって運用会社のガバナンスは、取り扱い商品の信用力に直結する問題だけに厳しく対処せざるをえないことだ。金融庁は2022年5月27日に「資産運用業高度化プログレスレポート2022」を公表し、運用会社に対して「顧客利益を最優先に考えた組織的な態勢整備と取組みを進めていくべきである」と強調した。そして、アクティブファンドの運用実績を検証した上で、「ファンドが20本以下の社ではアクティブファンドの平均シャープレシオ(0.49)を上回る社が多くある一方、100本以上のファンドを運用する社ではシャープレシオがマイナスとなっているファンドも多くみられる」と指摘し、商品1本1本に行き届いた運用管理をすべきだというプロダクトガバナンスの徹底を求めている。
また、そのレポートにおいて、金融庁が運用会社37社、225本のESG投信を調べたところ、11社にESG専門部署・チームがなく、14社にESG専門人材が1人もいなかったことを明らかにしている。この調査結果を受けて、「金融商品取引業者当向けの総合的な監督指針を改正する」と述べている。これは、人気化しているESG投信に関して金融庁が特に調査して「ESG投信と名乗るからには、それにふさわしい運用を実行すべき」というガバナンスに対する厳しい監督姿勢を強調したものだが、ESG投信だけにとどまらず、広く運用会社、また、販売会社にも自省を促すものになった。