1ドル=150円をつけた歴史的な円安や資源高を背景とするインフレが続くなか、日銀は2022年12月20日、金融緩和政策の一部修正を決定した。長期金利の上限を0.25%から0.5%程度へ引き上げ――事実上の利上げとも取れる発表を受け、市場は金融政策のさらなる修正も予想していたが、2023年1月18日に日銀は結局、政策の現状維持を決断した。
今回は結果的に市況を左右することとなった、日銀の長短金利操作「イールドカーブ・コントロール(YCC)」について解説。投資家への影響や今後の市況についても見ていく。
イールドカーブ・コントロールは金融緩和策の1つ
イールドカーブ・コントロール(YCC)とは日銀の金融緩和政策の1つで、短期金利と長期金利の誘導目標を定め、その水準をめざして国債を売買する施策だ。
長期金利とは金融機関が1年以上お金を貸し出す際に適用する金利である。日本では10年国債の利回りを目安としており、住宅ローンの金利指標としても扱われる。
この長期金利は景気を左右する1つの要因だ。例えば金利が低下すると、個人や企業は金融機関からお金を借りやすくなる。そのため住宅購入や設備投資が活性化し、経済活動が活発になるので景気が良くなる。一方、金利が上がると資金調達のコストも上昇。企業活動の後退から従業員の給与低下につながり、生活者の購買意欲も下がるため景気は悪化する。
日本は長らく不景気に苦しんできた。その主な原因は物価が下がり続けるデフレーションだとされている。そこで日銀では、経済活動を活発化させてインフレを誘発するため、異次元の金融緩和で金利を低水準に抑えてきた。その施策の1つが長短金利操作、イールドカーブ・コントロールなのである。
イールドカーブ・コントロールはその名の通り、利回り曲線とも呼ばれる「イールドカーブ」を適切な水準に保つための操作を指す。
イールドカーブとは、債券の利回りと償還期間との相関性を表した曲線のこと。短期債より長期債の利回りが高い状態が通常と考えられており、日銀でも短期金利をマイナス0.1%、長期金利をゼロ%程度に保つことを目標としている。
なお、現状足元の景気は上向いておらず、物価高のみが先行して国民生活を圧迫しているかたちである。2022年12月、日銀が踏み切ったイールドカーブ・コントロールの許容幅拡大、実質的な利上げの容認は景気の抑制ではなく物価高の解消が目的だったと推察される。