山で遭難したらいくらかかる?

山の事故は噴火だけではありません。けがや道に迷うなどし、遭難してしまう事故が多く発生しています。

登山ブームなどの影響から、遭難者数はこれまで右肩上がりに増加してきました。1999年ごろの遭難者は約1000人ほどでしたが、直近の10年間は毎年3000人ほどが遭難しています。警察庁によれば、2021年は3075人が遭難し、うち283人は死亡または行方不明となりました。

【山岳遭難者の内訳】

警察庁「令和3年における山岳遭難の概況」より著者作成

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遭難すると、命の危険だけでなく、救助費用の負担が発生する事態が懸念されます。

警察や消防といった公的な救助機関が救出に向かう場合、費用は原則としてかかりません。費用が発生するのは、民間の救助機関が救助に参加する場合です。日本山岳救助機構合同会社によると、ある航空会社の救助料金は1時間あたり46万5000円、遭難場所が明確な場合で50~80万円程度の費用がかかるようです。このほか、民間の救助隊などが捜索にあたれば、隊員1人につき1日数万円の費用を支払わなければいけません。捜索の規模によっては100万円を超えることもあるでしょう。

なお、遭難者が助けを求めないケースでも、救助が行われれば費用が請求される可能性があります。民法では「事務管理」という規定があり、義務がなくても本人を助けるような行動を取った場合、その費用を請求できる旨を定めているためです。

【民法第697条「事務管理」(一部抜粋)】
義務なく他人のために事務の管理を始めた者(以下この章において「管理者」という。)は、その事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって、その事務の管理……をしなければならない。

【民法第702条「管理者による費用の償還請求等」(一部抜粋)】
管理者は、本人のために有益な費用を支出したときは、本人に対し、その償還を請求することができる。

出所:e-Gov法令検索 民法

また一部の自治体では、公的救助機関であっても費用が請求されるケースがあるため注意してください。埼玉県では独自に条例を定め、指定された地域で県の防災ヘリコプターが救助にあたった場合、5分あたり5000円の手数料を納付するよう定められました。埼玉県によると、過去の平均救助時間は約1時間であるということから、6万円ほどの費用が発生する計算です。