国をあげて工場誘致を受けるTSMCの技術力

半導体は小型化と省電力化がそのまま商品競争力として武器となる。TSMCはこの微細化競争においてもトップを走り、5ナノメートル(1ナノメートル=100万分の1ミリ)チップの実用化に成功し、さらに他の企業に先駆けて最先端となる、3ナノメートルチップの量産化計画を推し進めてきた。

TSMCが蓄積してきた最先端半導体の生産技術は、半導体を用いた電子部品(半導体デバイス)の性能を大きく向上させる推進力となる。IoTなどの次世代技術の開発に欠かせない存在でもあり、半導体市場内にとどまらず、様々な産業の競争力や供給力に関係するエッセンスとなり得る。ひいては、国全体の経済成長や社会インフラの進展にも影響するだろう。

米国ではすでに半導体が「戦略物資」と捉えられ、バイデン大統領は半導体の国内生産を促進する法律(CHIPS法)も成立させている。2020年、TSMCは米国政府からの支援を受け、アリゾナ州に先端半導体製造工場を建設すると公表した。その後も2022年12月6日、3ナノメートルチップの生産が可能な第2工場の建設も発表し、同日の別の式典でバイデン大統領は、国内半導体生産力の強化に向けTSMCが重要な存在であることを改めて示している。

米国が半導体の国内生産を重視する背景には、米中対立による両国間でのデカップリングの進行がある。米国はここ数年、先端半導体や半導体製造装置などの対中輸出規制を強化。国内のサプライチェーンが今後一層乱れるのを防ぐため、半導体を確保することが経済安全保障にとって外せない課題となっているわけだ。