2022年11月、著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏率いる米投資・保険会社バークシャー・ハサウェイが、半導体の受託製造会社TSMC(台湾積体電路製造)の株式を大量に購入したと報じられた。これを受けて株価は一時10%前後も上昇をみせるなど、市場ではTSMCへの注目度が一層高まるきっかけともなった。今回は、世界的にも話題を集めたTSMCがどういった企業なのか、業績展望と半導体市場の見通しも踏まえて解説していく。

トヨタの2倍近い時価総額にまで成長

TSMCは台湾を拠点として、半導体の受託製造を行う専門企業だ。米国だけでなく、500社以上ともいわれる世界中の顧客向けに商品を提供し、半導体製造のキープレーヤーとして目覚ましい成長を遂げている。2022年12月中旬現在の時価総額ではトヨタ自動車が約2351億米ドルに対して、TSMCは約4171億米ドルと2倍近い規模だ。

近年、スマートフォンの普及だけでなくIoTやAIなど最先端技術の進化により、世界的に半導体需要が高まった。TSMCは市場拡大とともに、大きく業績を伸ばし続けてきている。

TSMCが躍進した背景に触れるため、半導体市場の経緯について簡単に触れておこう。1970年代まではすべての製造過程を同じ会社で一貫して行うことが一般的だった半導体だが、その後世界的に分業化が進行。現在は「製造」を行うファウンドリーと「設計・販売」などを行うファブレス企業に分かれるかたちとなっている。ファブレス企業が米国などに多い一方、ファウンドリーは台湾をはじめとした東アジアに集中している。

TSMCは1987年の創業以来、半導体の製造を担うファウンドリー企業として30年以上市場で競争を続けてきた。1997年には、台湾の企業としては初めてニューヨーク証券取引所に上場。2000年代以降は垂直統合ではなく、水平型に製造や開発の分業化が加速したのを背景に需要が一段と活発になり、製造を外部委託するクアルコムやエヌビディアなどのファブレス企業からの需要も大量に引き受けている。そこで、TSMCにしか提供できないオーダーメイドの高度な設計の半導体を提供することで、地歩を固めてきた。

そうして今では、米国のインテルや韓国のサムスン電子を抜き、ファウンドリー市場の50%以上のシェアを誇る世界最大の半導体製造会社に成長。2021年通期の売上高は前年比18.5%増の約524億米ドル(約1兆5900億台湾ドル)とまだまだ業績を伸ばしそうな勢いで、業界のリーディングカンパニーとしての存在感は一層大きくなっている。