日本も半導体技術競争の蚊帳の外ではない
TSMCの誘致支援は日本でも行われている。TSMCは2021年2月に日本で初の研究開発拠点を茨城県つくば市に設置すると表明。同年10月には、熊本県で2024年末に稼働を目指す工場建設を進めることを発表し、岸田文雄首相は経済政策として1兆円規模の大型支援を行う姿勢を表明した。
設計から製造まで手がける垂直統合型のメーカー(IDM)が多かった日本は、1980年代には日本電気(NEC)や東芝などが半導体市場を席巻。1980年代後半、世界半導体市場における日本勢のシェアは5割を超えていた。
しかし、その後半導体市場の分業化の流れなどに乗り遅れて、とくにチップ製造においては海外の技術競争で後塵を拝す状況が続いている。
とはいえ、半導体の製造過程は多岐に渡る。半導体業界は自社で製造を行う/行わないという「ファブレス」「ファウンドリー」の分類だけでなく、「半導体メーカー」と、その生産工程を支える「半導体製造装置・材料メーカー」の2つの分類方法もある。チップを生産する半導体メーカー市場以外に目を向ければ、製造装置では東京エレクトロンやアドバンテスト、材料の分野では信越化学工業など、世界シェアに名を連ねる企業もある。
先ほど、米国の半導体製造力の強靭化に向けた工場誘致の流れを説明したが、その対象は日本の半導体製造装置や材料メーカーが含まれている。つまり、日本の高度な技術力が活かされる場はまだ残っている。
半導体市場は1兆米ドル規模に拡大へ
半導体メーカーの業界団体である市場予測機関WSTSによると、2022年における半導体市場の規模は6000億米ドル台になるとのこと。調査会社によっては、2030年にはこの金額が1兆米ドルに届くとの見方もある。
この成長の波に乗って、TSMCや日本企業が今後どのような存在感を世界で示すことになるのか、今後も動向に注目したいところだ。