円安が自動車メーカーに強力な追い風となっている。トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車の2022年9月中間決算が11月上旬に出そろい、円安効果で前年同期に対し全社増収となった。一方で、当期純利益は材料価格の高騰などが影響し減益で着地。通期業績の見通しでは、各社売上を上方修正、当期純利益はトヨタが据え置いたもののホンダ、日産が上方修正した。自動車メーカーを頂点とする自動車業界はすそ野は広く、自動車関連産業を含めると就業人口は552万人に上る。さらに電子部品や鉄鋼など多くの業界は自動車業界の景気に少なからず影響される。自動車メーカーの中間決算や上期の自動車生産・販売状況を振り返るとともに下期に向けた動向を解説していく。

国内自動車メーカーの上半期決算

「為替、金利、資材価格、エネルギー、半導体、新型コロナなど、どれ一つとっても大変な変化がこの半年間に同時に起きた」。11月1日にオンラインで決算発表したトヨタの近健太副社長はこう振り返った。トヨタの2022年中間決算は、売上高が17兆7093億円(前期比14.4%増)と過去最高を更新。一方、営業利益は同34.7%減の1兆1414億円、最終利益も同23.2%減の1兆1710億円となり、中間決算としては2年ぶりの減益となった。前期に比べ、為替変動が5650億円のプラスとなったが、資材高騰(同7650億円のマイナス)、ロシアでの生産終了などの減益要因が重なった。近副社長はその中でも「しっかりと収益を確保でき、台数に対しても減産などで迷惑をかけているが、過去に比べ高いレベルの生産を維持できた。ただ減益決算なので、今後挽回していきたい」と下期に向けて語った。

ホンダの中間決算は売上高が8兆853億円(同15.7%増)で過去最高だった。⼆輪⾞販売台数の増加、為替影響などにより、営業利益は4534億円(同2.5%増)、最終利益は国内関連会社における持分法による投資利益の減少などで3385億円(同13.0%減)だった。

日産は、売上高が4兆6622億円(同18.1%増)、円安などの為替の影響で営業利益は1566億円(同12.6%増)だったが、前年同期にあった、独メルセデス・ベンツグループ株の売却益がなくなったことなどが響き、最終利益は644億円(同61.8%減)となった。

先に述べたように自動車業界はすそ野の広い業界だ。デンソーやブリヂストンなど主要自動車関連会社以外にも自動車の生産台数に業績を左右される企業も多い。電子部品メーカーのTDKの中間決算は売上高・営業利益とも過去最高を更新。自動車生産が緩やかな回復基調にあり、電気自動車(EV)やADAS(先進運転支援システム)化の進展により自動車部品需要が堅調に推移したことが好決算の一因としている。