銀行取引の停止が「事実上の破綻」になる理由

上述の通り、ジャパンライフは銀行で不渡りを相次いで発生させ、銀行取引停止処分を受けたことで事実上の破綻を迎えました。

「不渡り」とは、自社が振り出した手形の期日までに入金せず、相手が資金を手にできないことをいいます(1号不渡り)。これを半年以内に2度続けると、銀行取引停止処分が下されます。銀行取引停止処分とは、手形交換所の加盟金融機関が出す制裁で、これを受けると2年間は当座取引や貸出取引ができません。

なお、手形交換所は現在、全国銀行協会が運営する電子交換所に移行しています。電子交換所においても、銀行取引停止処分と同じ内容の「取引停止処分」が導入されているため、不渡りを出せば処分は避けられません。

ところで、破産手続きのように法的に企業を清算する手続きではない取引停止処分が、なぜ事実上の破綻となるのでしょうか。それは企業の信用力に大きく関わるためです。

取引停止処分が出されると、電子交換所に参加する金融機関にその旨が通知されますが、ほぼ全ての銀行や信用金庫が電子交換所に参加しています(2022年11月時点の参加行:1127)。つまり不渡りの情報は、不渡りを出した銀行だけでなく、全ての銀行で共有されるといっても過言ではありません。

従って、不渡りを出すと全国どこの銀行でも決済サービスや融資を受けられなくなり、活動に大きな制限が課されます。仕入れや販売の相手には現金決済をお願いすることになり、その過程で取引相手にも不渡りを出した事実が知られるでしょう。支払い能力を疑われ、取引を打ち切られるケースが想定されます。

このように、銀行の取引停止処分は直接的に企業を破綻させるものではありませんが、企業活動が困難となり、破綻に追い込まれる可能性が高いと言わざるを得ません。このため、一般的には銀行の取引停止処分が事実上の破綻を見なされるのです。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。