事務所に現れた相談者が語る「なぜFP相談にきたのか」
約束の時間に事務所に現われた夏美さんは、カジュアルなジーンズファッションの似合う、さわやかではつらつとした印象の女性でした。最初のうちは慣れないFP事務所の雰囲気に少し緊張していたようですが、次第に落ち着いてお話しくださいました。
「私は物心つく前に両親が離婚し、母1人子1人で育ちました。父とは全く音信不通で、母が父と連絡を取っている様子も私からは見えませんでした。だから、父がどんな人だったのか……それは母の言葉からしか分かりません。顔も知らなければ、父から私の養育費の支払いなどがあったのか、すでに別の女性と再婚しているのかも母に聞いたことがありません。
母はずっと女手1つで私を育ててくれました。母子家庭で裕福ではありませんでしたが、母が大好きだった私は幸せでした。父に会いたいと思ったことすらないんですよ……」
夏美さんのお話は続きます。
「私は短大を卒業して保育士になって、私立の保育園に就職しました。子どもが好きなので仕事は大変ですが、やりがいはあります。ただ、お給料が安くて、母と一緒に生活して、協力しているのでなんとかなりますが、貯金もままならない状況でした。仕事がキツくて給料が安いからか、職場も定着率がよくありません。21歳で働き始めて今、26歳ですけどもうかなりの古株です。結婚の予定もなく、このままくる日もくる日も、忙殺されて働き続けるのかなと思っていました」
ちなみに、年収は300万円ほどだそうです。お話から、お母様とつつましく、倹約して生活してきた様子がうかがえます。しかし、そこに“晴天の霹靂”ともいえる事態が起きます。