経営が苦しい企業が減資する理由

ところで、スカイマークの新規上場にかかる資料を見ると、2020年3月時点で90億円だった資本金が、翌期から1億円に減少していることに気付きます。

実は、資本金を1億円へ減資する企業は少なくありません。今年1月には液晶大手のジャパンディスプレイが、さらに8月には旅行大手のエイチ・アイ・エスが資本金を1億円にすると発表しました。

収益の悪化などで業容が縮小したのなら、減資は不自然ではありません。しかし、なぜそろって1億円への減資を目指すのでしょうか。理由は、税制上のメリットを受けられるためだと考えられます。

法人が納める税金の1つに「外形標準課税」があります。企業が地方に納める「法人事業税」の「付加価値割」と「資本割」で構成されており、税率はそれぞれ1.2%と0.5%です。

外形標準課税の対象は資本金1億円を超える法人のため、資本金を1億円に減らせば納める必要はありません。企業はこれを狙って減資するといわれています。総務省によると、2006~2020年で外形標準課税の対象企業は32.5%減少し、対して外形標準課税の対象外で資本金1億円の企業は45%上昇しました。

出所:総務省 外形標準課税に関する状況

大企業が税を免れる目的で減資する行為はよく批判されます。経営再建中だったシャープは、同じく資本金を1億円へ減らす計画を立てますが、批判を受けて5億円への減資に修正しました。

減資は通常、繰越欠損金を整理するといった目的で実施されます。コロナ禍では損失を計上する企業も多かったため、全ての企業が税の潜脱を目的に減資するわけではないでしょう。しかし国は、外形標準課税の適用除外を目的とした減資について対策を議論しています。今後、大企業の減資は難しくなるかもしれません。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。