2022年から急激な「円安ドル高」にトレンド転換
この円高は2012年の第2次安倍政権発足まで継続します。2013年4月に日銀総裁に黒田東彦氏が就任し、日本も大規模な量的金融緩和を開始したことから円安ドル高にトレンドが転換しました。コロナ禍の2020年後半に一時円高になりましたが、その後再び円安ドル高に。2022年からは日米金利差の拡大から円安が急速に進行し、10月についに150円の大台を突破しました。
1ドル100円を切る時代には渇望されていた円安ですが、皮肉なことに輸出大国だった日本は今や貿易赤字国。過度な円安は石油や食糧の輸入コストが上がり、インフレにより国民の負担が増すばかりとなりました。景気が活発になるインフレと違い、賃金上昇を伴わないインフレでは国民の購買力は上がりません。
総務省が発表した2022年8月の消費者物価指数は、総合指数で前年同月比プラス3.0%となりました。アベノミクスで目標とされていた2%の物価上昇率は達成されたにもかかわらず、日銀は大規模緩和の継続を明言しています。
一方、米国連邦準備制度理事会(FRB)は利上げの継続を表明しており、今後日米の金利差はさらに拡大するとみられます。少なくとも2022年のうちは円安が落ち着く可能性は低いのではないでしょうか。
円安で注目される「出稼ぎ日本人」の存在
過度の円安はデメリットが多く、国内に住む日本人の生活は苦しくなっています。その一方で注目されているのが、海外で働く「出稼ぎ日本人」です。
先日、米国で年収8000万円を稼ぐ日本人の寿司職人が話題になりました。日本での修業時代の年収は300万円。米国に渡ってニューヨークの寿司店で働くようになって年収は600万円に倍増したそうです。お金を貯めて自分の店を持ち、その上で年収8000万円になったとのこと。
上記の例は並々ならぬ努力のたまものであり、もちろん海外に行けば誰もが大金を稼げるわけではありません。しかし、海外で働きながら生活できるワーキングホリデーを利用すれば、日本の給料の2倍の収入が得られるといいます。雇われている人でも日本の2倍稼げる点は魅力です。現地の物価も日本の2倍と考えるべきですが、シェアハウスなどに住んで節約に励み、お金を貯めている人もいます。
かつて多くの外国人が「出稼ぎ日本人」と同様の理由で日本に働きに来ました。「出稼ぎ日本人」の増加は日本の国力の衰えを象徴しているといえるでしょう。