百貨店や不動産…収益の多角化を図る鉄道会社

赤字路線の問題を差し置いても、鉄道会社は少子高齢化や航空会社との競争などから、運輸収入の先細りが懸念されます。そこで鉄道会社の多くは、運輸業以外に百貨店などの流通業や不動産業といった事業を展開し、収益の多角化を図ってきました。

【JR各社のセグメント別売上高(2023年3月期第1四半期)】

出所:各社の決算短信より

さまざまな事業を展開することで経営の安定化に期待できるほか、事業間のシナジー効果でより効率的に収益を得る効果にも期待できます。例えば沿線の宅地開発や駅周辺の百貨店経営は、鉄道会社の強みを生かしやすい事業といえるでしょう。

また、今年は鉄道会社にとって回復の年にもなりそうです。新型コロナウイルスによる移動自粛のため、鉄道会社には厳しい経営環境が続いていました。しかし今年は3年ぶりにゴールデンウイークやお盆休みに行動制限が出されず、徐々に出歩く人が増えています。

さらに政府は4月から同一県内の旅行を支援する「地域観光事業支援(県民割)」を実施し、10月11日からは対象を全国の旅行に広げた「全国旅行支援(全国旅行割)」をスタートさせました。再び移動が活発になれば鉄道会社の収益にプラスに働くでしょう。

株価もそれを先取りしているようです。鉄道会社などで構成される「業種別東証株価指数(陸運業)」は年始からおよそ10%上昇しており、単純な東証株価指数を上回って推移しています(2022年10月5日時点)。経済の正常化が進めば、今後も優位な展開が続くかもしれません。

【2022年における東証株価指数(陸運業)の推移(年始を100とした場合)】

Investing.comより著者作成

拡大画像表示

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。