J-REIT「ファンド」は手数料が高めに設定

では、J-REITを組み入れて運用する投資信託はどうでしょうか。これは個別ファンドや販売金融機関によって違ってくるのですが、まずJ-REITファンドの場合、購入時手数料を購入者から徴収できます。これは販売金融機関によって料率が異なり、かつなかには購入時手数料を取らないノーロード型のファンドもありますが、いくつかのJ-REITファンドの購入時手数料を調べると、なかには上限として購入代金の3.3%としているようなものもあります。J-REITの売買にかかる売買委託手数料に比べて、はるかに高い料率を設定することが出来るのです。

さらにJ-REITファンドの場合、購入時手数料に加えて、信託報酬に含まれる販売金融機関の「代行手数料」も収益にすることができます。

これはファンドによって料率が異なるのですが、たとえば年率にして0.4%程度が、販売金融機関の受け取る分として設定されていたりします。つまり購入時手数料と信託報酬の代行手数料分を合わせると、J-REITの売買委託手数料と比較して、効率的に稼げることになるのです。そのため、証券会社はJ-REITよりもJ-REITファンドの販売に力を入れる傾向が見られます。結果、J-REITのプロモーションが疎かになり、個人の間になかなか広まらない、ということになるのです。

ただ、これは昔から言われているのですが、証券会社が積極的にプロモーションしない商品は、実は個人にとってメリットが大きいというケースが結構あるのです。なぜなら証券会社は、自分たちが儲かる商品で無ければ積極的に販売しようとしないからです。これは一昔前のETFやインデックスファンドがそうでした。

J-REITもご多分に漏れず同じです。証券会社が手数料などで儲からないということは、それを用いて運用する側からすれば、それだけローコストで運用できることになります。

もちろん、J-REITの場合、営業収益から差し引かれる営業費用がコストであると考えられなくもありませんが、営業費用に含まれる資産運用報酬の額は、たとえばJ-REITのなかでも最も歴史のある「日本ビルファンド投資法人」の2022年6月期で19億1700万円です。

同ファンドは6カ月間で1期なので、年間にするとその倍の38億3400万円。これに対して、バランスシート上の総資産額は、2022年6月期で1兆3677億1900万円ですから、総資産額に占めるコストは0.28%に過ぎません。

もちろんJ-REITの方が、J-REITファンドに比べて最低投資金額は大きくなりがちですし、J-REITファンドのような分散投資をしようとするならば、かなり多額の資金を必要としますが、コストの低さ、安定していて、かつ相対的に高いキャッシュフローが期待できるという点で、個人ベースでもJ-REITへの直接投資を積極的に検討する価値はあると考えられます。