「証券会社が儲けにくい」J-REITのプロモーションは消極的

では、なぜ個人の間でJ-REIT投資に対する人気が高まらないのでしょうか。理由は、証券会社によるJ-REITのプロモーション不足が考えられます。

J-REITは「不動産投資信託」といって投資信託の一種とされていますが、正確には「投資法人」に分類されます。投資法人は投資を行う法人のことであり、その法人が発行する投資主証券を証券取引所に上場するという仕組みは、まさに株式と同じです。そのため、J-REITの売買を仲介できるのは証券会社のみで、銀行などその他の金融機関は扱うことができません。

したがって、J-REITへの投資が個人の間に広まるかどうかは、ひとえに証券会社のプロモーションにかかっているのですが、残念ながら証券会社はJ-REITのプロモーションには消極的です。

理由はJ-REITをそのまま個人に買ってもらうよりも、J-REITをパッケージにしたJ-REITファンドを買ってもらった方が、証券会社としては実入りが良いからです。

J-REITの売買を仲介した時に証券会社が受け取れる収益は、売買委託手数料のみです。その売買委託手数料も、現在に至るまでの手数料引き下げ競争によって、極めて低率になっています。ちなみに国内最大のネット証券であるSBI証券の場合、約定代金が100万円に対して取られる売買委託手数料は535円です。率にして0.0535%です。売買委託手数料は買いと売りの双方で取られますが、それでも0.107%に過ぎません。

つまり、どれだけ売買を繰り返してもらったとしても、証券会社が受け取れる収益は非常に少ないのです。

しかも、株式のようにデイトレーダーのような短期売買を行う投資家がJ-REIT市場に大勢いるならば、証券会社としてもJ-REITのプロモーションに力を入れるのかも知れませんが、J-REITは値動きが比較的安定しているため、値幅取りを狙って頻繁に売買を繰り返すような投資方法には不向きです。つまりJ-REITは、証券会社にとってうまみの少ない商品なのです。