コロナ融資後の企業倒産が増加し、対前年を上回る勢い

先述した同レポート「全国企業倒産集計2022年上半期報・6月報」には注目すべき分析が掲載されている。それは「コロナ融資を受けた後に倒産したコロナ融資後倒産が急増している」と指摘している点だ。同社によると22年6月までに判明したコロナ融資後倒産は、累計で362件。うち22年の件数は181件で、前年の1―6月合計(166件)を上回った。実際の融資額が判明した約120社における1社あたりのコロナ融資の借入額平均は約6000万円で、全体のコロナ融資損失総額は推計で217億2000万円にのぼり、国民一人当たり170円の負担が既に発生している計算になる。

さらに同社が2月に実施したコロナ融資を借りた企業への調査では「約1割の企業が返済に不安がある」との回答をしており、コロナ融資は大きな重荷となっている。既にコロナ融資を運転資金などで使い切っているケースも多い中、「返済開始が本格化する今夏以降、収益力が戻らず返済原資の確保ができない企業のあきらめによる倒産が急増する可能性が高まっている」と今後もこの流れが続くとの見通しを示した。

新型コロナの影響は経営を抜本的に見直し、無駄な経費を浮き彫りにして筋肉質な組織に生まれ変わるきっかけを作った側面もある。既存事業への危機感から新規事業で活路を見出した企業もある。いかに「ピンチをピンチのままでなく、チャンスに変えられるのか」とも言えば、きれいごとに聞こえるかもしれない。実際に20―21年の倒産件数が給付金や融資により歴史的な低水準だったということは、多くの企業は最初のピンチの山を越えることができた。ただ、新型コロナの新規感染者数増加(第7波)やエネルギー価格の上昇、円安など、さらなる山が立ちふさがる。追い打ちを掛けるように最初のピンチの山を登った疲れ(返済)が出始めている。山を登ることをあきらめる企業がこれから相次げば、倒産件数がさらに増えていく可能性がある。

執筆/鎌田 正雄
合同会社ユニークアイズ代表。大手産業総合紙で記者経験を積み、主に自動車業界や中小企業など製造業の取材に従事し、2021年に独立。「ものづくりのまち」で有名な東京都大田区生まれで町工場の息子。はやりのポイ活で集めたポイントを原資に少額ながら超低リスク投資を始めた