高い外貨預金利率の裏側には未反映の為替手数料コストが
このネット銀行のホームページを見ると、外貨預金の利率が誇らしげに表示されていますが、為替手数料というコストを加味すると、表示されている利率に対して、その半分程度の収益効果しか得られないことになります。
一方、銀行側から見ると、通常の3カ月物ドル建て定期預金利率が年1.10%ですから、90日間で発生する利息は1万ドルの元本に対して27ドルになります。キャンペーン金利の76.43ドルとの差は49.43ドルです。キャンペーン金利によって49.43ドルを余計に負担する形になっているのですが、この余計な負担額を、TTSレートである1ドル=136.56円で円建てに換算すると6748円になります。
銀行からすると、5000円の為替手数料を預金者からもらって、6748円の利息を余計に払う形になりますから、まだこの時点では割が合っていません。1748円の持ち出しです。
ただ、日本の銀行が扱っている外貨預金にはもうひとつだけ疑問があります。それは提示している利率が、本当に米国国内におけるドル建て預金と同じ利率なのかということです。
米国国内で営業している銀行の預金利率を調べてみたところ、1年物が年1.20~1.75%、3年物が年1.70~2.25%でした。ちなみにこれらの数字は2022年5月時点のものです。
仮に年1.10%で受け入れたドル預金を、年2.25%の米国の3年物定期預金で運用すれば、それだけで1.15%の利ザヤを確保できます。つまり、キャンペーン金利で預金を集め、3カ月間というキャンペーン金利適用期間後も、通常の利率で預け続けてもらい、その資金をより高い利率が適用されるドル建て預金で運用すれば、3カ月間のキャンペーン金利適用期間中に、銀行側の持ち出し分に相当する1748円などは、簡単に回収できそうです。
このように、外貨預金の収益構造を詳細に見ていくと、いくらキャンペーン金利が上乗せされたとしても、利用者にとっては大したメリットではないことが分かるのです。