上乗せ金利は金融機関が外貨を交換する「TTBレート」がカギに

前述したように、米国の政策金利は1.50~1.75%。そして、米国内の銀行が融資を行う際に適用している金利は年4%弱です。日本の銀行が、3.10%で調達した資金を4%弱で貸し出したとしても、大した利ザヤは取れませんし、そもそも日本のネット銀行が、米国で融資を行えるだけのインフラや融資先を持っているとも思えません。そうであるにも関わらず、なぜドル建て定期預金で年3.10%もの利率を提示できるのでしょうか。

恐らく、このネット銀行のような、高金利外貨預金の利率を見て、外貨投資に興味を持つ人もいるでしょう。でも、「今がチャンスだ」などと早とちりをしてお金を預ける前に、どうしてネット銀行がこれだけの利率を提示して預金を集めるのか、ということをしっかり考える必要があります。

基本的に銀行である以上、民間企業ですから収益を上げなければなりません。高金利外貨預金に預けた時、皆さんは恐らく「有利な条件でお金を運用できるから良かった」などと思うのかも知れませんが、本当に銀行は皆さんを喜ばせるために、こうした高金利外貨預金を用意したのでしょうか。

このネット銀行が提示している条件は、3カ月物ドル建て定期預金の利率が年3.10%というものです。ドル建て預金にお金を預ける際には、円をドルに交換しなければなりません。これが「TTSレート」と呼ばれるもので、7月26日時点では1ドル=136.56円です。そして、預けた外貨を円に替える際のTTBレートは1ドル=136.06円ですから、両者の差である0.50円は銀行の収益に計上されます。逆から見ると、預金者が負担するコストです。

1ドルにつき0.50円ということは、1万ドルで取引した際の為替コストは5000円になります。

次に年3.10%の3カ月物ドル建て定期預金で運用した際に得られる利息収入ですが、これは次のように計算します。

1万ドル×3.10%×(90日÷365日)=76.43ドル

上記の数字は税引き前です。利用者が実際に受け取る際の利息は税引後になりますが、ここでは計算がややこしくなるので、ひとまず税引前で計算していきます。預け入れた時の為替レートを、前出のTTSである136.56ドルで計算すると、1万ドルの預入元本は136万5600円になります。そして、3カ月間の預入期間で得られる利息が76.43ドルですから、これをTTBで円建てに戻すと、円建ての利息は1万399円になります。

ただし、円をドルに替えて預ける一方、満期時にはドルを円に替えて元本を受け取るため、この取引だけで1万ドルあたり5000円の為替手数料が取られます。つまり3カ月間で1万399円の利息が得られたとしても、5000円の為替手数料も差し引かれますから、結局のところ実質的に得られる利息は5399円になります。

3カ月間で5399円ということは、これを4倍(3カ月×4=12か月=1年)にし、TTSで計算したドル建て預入金額の136万5600円で割ると、年1.58%という数字が算出されます。つまり為替コストを加味した同外貨預金の実質的な利率は、年1.58%になるのです。