「何がいいか教えて!」は一番困る質問 自分で考えて行動することが大事

また、企業型DCの加入経験がなく、自力でiDeCoを始めた佐藤さんは、DC制度のある会社員がうらやましいとも語る。会社のDC口座を放置している加入者も少なくないことを話すと、目を見開いた。

「会社が投資のお金を出してくれるなんてうらやましいです。掛け金が企業負担なので切実ではないのかもしれませんが…でも、労働者って労働を会社に提供しているわけですよね。だから、会社の資本は本来は自分の資本でもあるんです。DCの積立金も同じ。それを放置するのは、自分のお金を放置するのと同じだと思います」

投資をしていることを友達などに話すと、「何をやればいい?」と聞かれることが多いが、この質問にも困ると佐藤さんは強調する。なぜなら、人によってどれだけのリスクに耐えられるか、どんな投資をしたいか、目標額はどれくらいかなど、全く違うからだ。

「実は私、リスク耐性が高いんです。投資信託を最初に買った時、いきなりすぐ下がったんですね。その時、『あ、下がるものなんだな』と、その事実を受け止めて15年後、20年後にプラスになればいい!と思えたので、向いていたと思います」

個人差があるので万人に「おすすめ」なものはない。そういった点を踏まえた上で、初心者には「まずは1万円を投信などに投資してみて、値段が下がった時に自分がどんな気持ちで過ごせるか試してみるのをおすすめします」と、アドバイスする。

これからは自己決定の時代、と佐藤さんは言う。
投資をしている人は信頼できる、という見方もあります。極端かもしれませんが、“自分で社会を見る目を持ち、自己決定できる人は信頼できるということだと思います。これからは自分で考えて自分で行動しないと厳しい時代。投資もそのひとつだと思います」

折しもインフレが進み、預貯金だけでは資産は目減りする時代になった。リスク資産とどう付き合っていくかは、30代、40代に限らず、今後の日本を生きる一般庶民にも問われてきそうだ。

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。