昭和のお金の常識は、令和の非常識?
問題はその子供世代です。前述したように、給与の伸び率が大幅に低下し、かつ実際に使えるお金が、社会保障負担の増加によって目減りしています。社会人になったら、誰もが自分で稼いで生活をするわけですが、親世代に比べて収入の伸びが低下している昨今においては、お金に関する常識を、親世代とは大きく変えていく必要があります。昭和的お金の常識は、これからの時代には通用しなくなるということです。
たとえば生命保険。昔は社会人になると、先輩社員の知り合いなどと称する保険外交員が事務所まで来て、生命保険に加入させられましたが、独身時代に生命保険に加入する意味など全くありません。妻子がいないのに誰が保険金の受取人になるのかといえば、両親です。
でも、すでに老後を迎えようとしている両親を受取人にして、生命保険に加入する意味などどこにもありません。
そもそも生命保険は、被保険者が亡くなった時、一家の大黒柱を失って生計を立てるのが困難になるリスクを回避するために加入するものです。長年働いて、ある程度の蓄財を済ませているはずの両親を受取人にした生命保険の保険料を、少ない給料の中から支払う必要性はどこにもありません。
その親は、こう言います。「大人になったら家を建てて一人前」。この刷り込みがあるせいか、結婚して子供を持つ30代半ばになると、収入に比して負担が重い住宅ローンを組んで家を購入する人が、今も後を絶ちません。
もちろん、持ち家にするか賃貸にするかの判断は個々人の自由ですが、問題はどれだけの期間、住宅ローンを払い続けるのか、ということです。多くの人は35年という長期の住宅ローンを組みます。35歳で家を購入するとしたら、住宅ローンを完済するのは70歳の時です。
これだけ長期の住宅ローンを組めたのは、終身雇用と年功序列賃金が保証されていたからです。定年まで雇用が保証され、かつ年齢が上がるほど賃金が増えていくという、昭和の雇用体系だったからこそ、長期の住宅ローンが成り立ちました。
でも、今は前述したように給料の伸びが低く、かつ終身雇用も危うくなっています。そういう状況で35年という長期の住宅ローンを組むことのリスクを、しっかり認識する必要があります。