インフレの影響を受けやすい高齢者がインフレに強い資産を持つべき?

なかでも、高インフレの悪影響を最も受けるのは、「年金のみで生活している単身高齢者」であると、このレポートは指摘し、その理由として「単身世帯の方が、2人以上世帯に比べて1人あたり生活費が大きくなる傾向があること」。「2022年度の年金額の減額改定によって、2022年6月支払い分から年金受給額が微減したこと」を挙げています。

正直なところ、今のインフレがいつまで続くのかは、分かりません。ウクライナ問題の解決とロシア経済制裁の解除、コロナ後における世界経済の正常化に伴う供給不足という問題が解決すれば、インフレは徐々に落ち着くはずです。

今のように世界的なインフレ懸念が強まっている時は、「インフレに強い資産を持つべきだ」という声が方々から聞こえてきますが、それは高インフレの悪影響を強く受ける「年金のみで生活している単身高齢者」にも当てはまるでしょうか。

前述したように、状況次第では今後、徐々に世界的なインフレが落ち着く可能性もあります。

そうなった時、インフレに強い資産の価格は、ある程度の値幅で調整します。そして調整後の問題点は、ある程度値下がりした後、値下がり前の価格を奪還するまでに、どのくらいの時間がかかるのか、ということです。

高齢者であるほど、運用できる時間は限られてきます。もちろん短時間で奪還できる可能性があることも否定しませんが、それはどうなるか全くわかりません。だとしたら、「年金のみで生活している単身高齢者」がインフレに強いと言われる資産に投資するのは、慎重にも慎重を期す必要があります。投資する上限はポートフォリオの10%程度に留め、仮に値下がりしたとしても、それによって老後の大事な資産が毀損しないような工夫をすること。加えて値下がりしたとしても、売却せずに保有し続けるようにすること。この2点をしっかり守る必要があります。

「高齢者であるほど、運用できる時間は限られてきます」と言いながら、「売却せずに保有し続けるようにする」というのも変な話ですが、現時点の高齢者で、「インフレリスクをヘッジできる可能性のあるポートフォリオを持ちたい」と言うのであれば、極端な話、自分の死後の財産は相続させるという前提で、とにかく自分の生きている間は保険替わりにするという前提で、インフレヘッジが可能な資産を持つしかないでしょう。

最後にもうひとつ加えるなら、この手のインフレヘッジに有効と思われる資産への投資は、高齢者ではなく、もっと年齢の若い人ほど、しっかり意識するべきです。

年齢が若ければ目先、価格が下がったとしても、元の水準まで戻るのを待つことが出来ますし、もしこれから本格的なインフレの時代が到来するのであれば、保有資産の一部にインフレリスクをヘッジできる資産を組み入れるのは、合理的です。

本格的なインフレの時代が来るかどうかは、誰にも分かりません。が、来るか来ないか分からないようなリスクにも、万が一のことを考えて対応しておくのが、ポートフォリオ運用です。だからこそ長期運用が可能な人は、保有資産の一部をインフレに強い資産に切り替えておくことも、検討しておく必要があるのです。