・日本の老舗上場企業も倒産…「超大国」中国に潜む“破壊行為”の恐怖
「アジア開発銀行(ADB)」という銀行を聞いたことがありますか? 「銀行」とありますが、いわゆる通常の銀行ではありません。主に新興国の発展を支援する「国際開発金融機関」の1つで、1966年に発足したアジア開発銀行は主にアジア地域において活動しています。
しかし2015年、新しいアジア地域の国際開発金融機関が誕生します。「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」がそれで、中国が主導して設立しました。2015年6月29日に行われた署名式では50カ国が署名しています。
アジアインフラ投資銀行の狙いは何なのでしょうか。
中国主導の開発銀行。既存のアジア開発銀行に対抗
経済発展には資金を融通する金融機関が欠かせません。しかし新興国は金融インフラが整っていないことも多く、単独での経済成長は困難です。そこで、先進国などの出資からなる国際開発金融機関が新興国などへ融資を行ってきました。アジア開発銀行はアジア地域を担当しています。
【既存の主な国際開発金融機関】
・全世界:世界銀行グループ(1945年)
・アジア地域:アジア開発銀行(1966年)
・ヨーロッパ地域:欧州復興開発銀行(1991年)
・中南米・カリブ地域:米州開発銀行(1959年)
・アフリカ地域:アフリカ開発銀行(1964年)
※()は設立年
出所:財務省 国際開発金融機関(MDBs)~世界銀行、アジア開発銀行等~
上記の通り、アジア地域における国際開発金融機関は既にアジア開発銀行がありました。それにもかかわらず、中国はなぜ同じ地域でアジアインフラ投資銀行を設立したのでしょうか。
理由の1つと考えられているのが、アジア開発銀行における中国の出資比率の低さです。アジア開発銀行に対する中国の出資比率は2020年末時点で6.4%しかなく、日本(15.6%)や米国(15.6%)の半分にも届きません。議決権の大部分は出資比率に応じて配分されるため、中国はアジア開発銀行の運営に対する発言力が弱いという状況にありました。
【アジア開発銀行(ADB)における出資割合の上位5カ国】
・日本:15.6%
・米国:15.6%
・中国:6.4%
・インド:6.3%
・オーストラリア:5.8%
※2020年12月末
出所:財務省 MDBsパンフレット(2021年版)
対してアジアインフラ投資銀行では中国の議決権がおよそ3割に達し、一国としては唯一拒否権を持つとされています。このような違いから、アジアインフラ投資銀行は中国の思惑を反映させるために設立されたと考えられるようになりました。これを警戒してか、日本や米国はアジアインフラ投資銀行に加盟していません。