破綻企業を買う? ヘッジファンドも行うディストレスト投資とは

通常、私たちが投資を行う際は優良企業を選別するケースが多いと思います。そう考えると、破綻した企業をわざわざ買収する意図があまりイメージできないかもしれません。

株式や債券といった有価証券は発行企業が破綻すると一般的に価値が大きく下落します。時には実態を大きく下回る水準まで値下がりすることもあるでしょう。そのような値段で取得できれば現金化できたときに大きな利益を得られるかもしれません。このように、破綻した企業(または破綻に近しい企業)にあえて投資する戦略を「ディストレスト投資」といいます。

ディストレスト投資の対象となりやすいのは債券です。一般に株式は弁済順位(※)が最も低いため、いざ法的な債務整理が始まると資金を回収できる可能性は高くありません。しかし債券は比較的弁済順位が高く、破綻企業から優先的に支払いを受けられます。投資額や破綻企業の負債状況によってはリターンを得られる可能性があるでしょう。

※弁済順位:企業が負債を返済する際の順位。一般に社債>劣後債>優先株>普通株の順に弁済される。

ディストレスト投資の例としては、ヘッジファンド「エリオット・マネジメント」(以下エリオット)がアルゼンチン国債に対して行ったものが有名です。エリオットは2001年にデフォルト(利息や元本が支払われない状態)に陥ったアルゼンチン国債を買い集め、全額の支払いを求めてアルゼンチン政府を提訴します。

訴訟は2014年まで続き、最終的にアルゼンチン政府がエリオットらに約5300億円を支払うことで和解しました。この取引でエリオットは巨額の利益を得たと考えられています。

執筆/若山卓也(わかやまFPサービス)

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。