働き方改革の趣旨とは違う、時間を切り売りする低所得層の副業が増加
では、なぜ副業をするのでしょうか。複数回答可で副業保有の理由を見たところ、トップが「収入を増やしたいから」で57.3%、次いで「1つの仕事だけでは生活自体が営めないから」が29.0%となりました。
以下、「自分が活躍できる場を広げたいから(22.8%)」、「様々な分野の人とつながりができるから(17.7%)」、「副業の方が本当に好きな仕事だから(16.7%)」などが続いています。
「自分が活躍できる場を広げたいから」、「様々な分野の人とつながりができるから」のいずれかを回答に選んだ人は、前向きな副業といっても良いでしょう。このように答えた人が、「働き方改革実行計画」が期待するところである、「副業や兼業は、新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業の手段、第2の人生の準備として有効」という、副業のポジティブな部分を体現していくものと考えられます。
しかし、現実は厳しいのも事実です。それは副業保有の理由で1位が「収入を増やしたいから」、2位が「1つの仕事だけでは生活自体が営めないから」という回答になったことからも推察できます。前出の年収別副業率によると、年収200万円以下の低所得層になるほど副業率の上昇が確認できたことからも、副業を持っている人たちの深刻な経済事情が伺われます。
ロシアのウクライナ侵攻による西側諸国の制裁強化で、今後も当面、ロシア産資源の西側諸国への供給制限が続けば、電気・ガス料金や食料品をはじめとする物価上昇懸念が強まります。インフレは、こういった低所得層の生活をダイレクトに脅かします。それだけに、ロシアへの制裁強化が解けない限り、低所得層を中心にした副業率の上昇は不可避ではないでしょうか。
ただ、恐らく年収200万円以下の層で副業率が上昇したとしても、「働き方改革実行計画」が期待している、「副業や兼業は、新たな技術の開発、オープンイノベーションや起業の手段、第2の人生の準備として有効」という本来の狙いは叶わないでしょう。
自分の趣味を副業にして起業に結び付けるといったイノベーティブな副業は、働き方改革実行計画の主旨に沿ったものですが、自分の時間を切り売りするような働き方による副業は、新たな技術の開発やオープンイノベーションにつながりにくい面があります。単に副業をすれば良いという話ではなく、何を副業にするのかという点が、問われてくるのではないでしょうか。