退職金を受け取るとき税金が引かれる? 公務員は退職所得控除を超えるケースが多数

退職一時金は「退職金 - 退職所得控除」×1/2が税金のかかるもとになり、ほかの所得とは区別して源泉分離課税として税金が計算されます。

そしてこの退職所得控除の算出は「勤続年数」が元になります。勤続1年~20年までは1年あたり40万円。21年目以降は1年あたり70万円です。

例えば、勤続30年の場合は【20年×40万円+10年×70万円=1500万円】が退職所得控除の金額となります。つまり、勤続30年なら1500万円までは税金がかからず、それを超えた分の半分(1/2)が所得税や住民税の対象となります。勤続年数に端数が出た場合は切り上げる決まりですので、例えば25年6ヶ月のようなときは26年として計算します。

公務員の定年退職時の退職金の平均は2200万円ほどのため、多くのケースでは退職所得控除の範囲を超えて課税されています。例えば、勤続30年で退職金が2000万円、退職所得控除が1500万円のときは、差額の500万円の1/2である250万円が税金の対象です。所得税の税額表(※1)に基づいて計算すると250万円×10%(※2)−97500円(控除額)=152,500円が所得税。250万円×10%=250,000円が住民税。両方を合わせて402,500円がこのケースの退職金にかかる税金です。

退職時に勤務先で「退職所得の受給に関する申告書」を提出すると、税金はあらかじめ計算されて退職金から差し引かれ、差額が退職金の手取りとなります。他に相殺できる所得がなければこれで退職金の税金の精算は完了です。勤務先からこれらの計算の根拠が書かれた「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」が交付されますので、必ず大事に保管しておきましょう。

(※1)https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/02_3.htm
(※2)所得税はこのほかに2037年まで復興特別所得税が2.1%加算されます。

退職金を分割で受け取ることはできる? また、その時の税金は?

退職金と言えばまとまった大きな金額を一度に受け取るものというイメージが強いかもしれませんが、分割で受け取れるものもあります。

先ほど記載した年金払い退職給付やiDeCoの老齢給付の分割受け取りなどがそれに該当します。一度に受け取り、退職金扱いにすると税金がかかってしまうようなケースでは、年金方式(分割)で受け取ることを選択するのも一つです。

分割で受け取るときは「雑所得(公的年金等)」に分類され税金計算がされます。公的年金は老後の生活の支えの中心となるため、退職金と同様に比較的税金がかかりにくくなっています。

公的年金にかかる税金は「公的年金等の収入金額の合計 - 公的年金等控除」の計算式で所得を計算します。公的年金等に該当するもの以外に所得(例えば給与や不動産所得)があれば合算しての税金計算です。一時金で受け取る退職金扱いのものは、ほかの所得とは分けて単独計算されるのに対し、分割で受け取る場合はほかの収入も考えなくてはいけないことに少し注意が必要です。

公的年金等控除は、年齢(65歳より前か後か)と年金などの収入金額によって違いがあります(※3)

例えば、65歳以降に国の年金を年間260万円受け取る場合、公的年金等控除を差し引いた所得は167.5万円となり、ほかに合算する所得があれば足し、なければここから各種所得控除を差し引いたのち、所得税や住民税を計算します。国民健康保険に加入しているときはこれらの所得も保険料の計算の対象となります。

なお、民間の保険契約から受け取る個人年金保険は同じ雑所得ですが、公的年金等控除の対象となりませんので気を付けましょう。

(※3)公的年金等に係る雑所得の金額の計算方法
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm