長寿化の時代、ミドルは二段ロケットさらには三段ロケット噴射の時

かつて“転職35歳限界説”という考え方が横行したが、終身雇用の日本では当然ともいえた。しかし、リクルートワークス研究所の調査によると、長年勤め上げたことに対して支給される退職一時金は減少する一方だ。2003年には平均の退職一時金は2499万円だったが、2018年になると1788万円と大きく減少した。終身にわたって一社で勤務することの是非が問われる時代となった。

むしろ35歳前後を含めたミドル世代は、新たなスキルを身につけ自己の価値を高める大切な時期となった。企業でもミドルのパワーアップを期待するところが増加し、スキルアップした人に対し、ジョブ型の人事体系で報酬面でも応えようとする企業が目立ち始めた。

パーソル総合研究所が2020年に調査した結果では、36%の企業が中高年のスキル・能力の不足が課題だとしている。NECでは、「NECライフキャリア」なる企業を創設し、中高年を対象とするキャリア開発やグループ内外への派遣・あっせんをサポートしている。東京海上日動火災保険は、中高年を対象とする「ライフシフト大学」を創設し、今後のキャリア設計へのサポートをするなど、企業の動きは活発だ。

ただ、キャリアの再開発は、あくまで個人が主体的に進めるべきものだろう。長い人生、現在所属する企業であろうと、転職先であろうと、新たに噴射するエンジンを自らが構築し稼働させるのは、一人一人の意識と行動にかかっているのではないだろうか。

執筆/大川洋三

慶應義塾大学卒業後、明治生命(現・明治安田生命)に入社。 企業保険制度設計部長等を歴任ののち、2004年から13年間にわたり東北福祉大学の特任教授(証券論等)。確定拠出年金教育協会・研究員。経済ジャーナリスト。著書・訳書に『アメリカを視点にした世界の年金・投資の動向』など。ブログで「アメリカ年金(401k・投資)ウォーク」を連載中。