高齢者から30-50代に投資詐欺のターゲットがシフト

ところが近年の投資詐欺の傾向を見ると、高齢者よりも若年齢層の方が、被害に遭うケースが増えているようです。「詐欺的な投資勧誘に関する情報の受付状況」には、年齢別の相談受付件数が示されています。1808件中1046件は年齢不明なので、あくまでもざっくりとした傾向が垣間見られるだけですが、年齢が分かった件数は以下のようになります。

20代以下・・・・・・111件
30代・・・・・・150件
40代・・・・・・176件
50代・・・・・・147件
60代・・・・・・94件
70代以上・・・・・・84件

60代、70代以上の相談件数に比べて、明らかに20代以下、30代、40代、50代の相談件数が多いのが分かります。特に40代は176件で、他の年代の中でもとりわけ相談件数が突出しました。

40代といえば会社内でのポジションが固まるのと同時に、自分自身の老後に対する関心も高まってくる時期です。今の給料で定年を迎えた時、どのくらいの額の貯蓄が出来ているだろうか。退職金はいくらだろうか。年金で生活しつつ、足りない分は貯蓄を回すとして、自分が何歳になるまで貯蓄は持つのだろうか。そんなことが気になる年齢でしょう。

もちろん、すでに十分な金融資産をはじめとした蓄えを持っていれば、何も問題はありません。しかし、なかには「全然、足りないかも」と思っている人もいるはずです。ちなみに厚生労働省が行った「国民生活基礎調査(2019年)」によると、世帯主が40~49歳の場合、1世帯当たりの平均貯蓄額は650万9000円でした。ちなみにこの数字はあくまでも平均値ですから、多くの人たちの実感としては、もう少し低めになるでしょう。

この金額を見て、「老後が不安」と思っている人のなかに、恐らく投資で増やそうと考える人が出てきます。もちろん、投資信託などで長期、積立、分散投資を行うならまだマシですが、なかには「高利回り、元本確保」といった甘言に騙される人も出てくるのです。最近よく耳にする怪しい話だと、「FXのシステム運用で月3%」とか、「暗号資産のHYPE(高収益投資プログラム)で日利1%」といったうたい文句で、SNSを用いた勧誘が積極的に行われているようです。

ちなみに月3%は年36%、日利1%は年365%に相当します。この超低金利において、このリターンはあまりにも現実離れしています。過去の投資詐欺の結末を見ると、たとえ犯人が逮捕されたとしても、お金はほとんど戻ってきません。労少なくしてお金が増えることなどありえない話なのです。