公務員の退職金は高額?
民間企業の退職金は法律で定められていないため、各社の制度にゆだねられていますが、公務員の退職金の計算は計算式が決まっています。
退職金の支給額の計算は「基本額(退職日の俸給月額×退職理由別・勤続期間別支給率)+調整額」で算出されます。『退職理由別・勤続期間別支給率』は、例えば、勤続35年で定年退職した場合47.709というように、条件によって定められています。さらに在職期間中の貢献度に応じて調整額を加算したものが退職手当となります。
退職時の俸給月額が40万円・勤続35年で調整額が180万円の場合「40万円×47.709+180万円=約2,088万円」というような計算です。地方公務員の定年退職者の平均支給額は約2209万円(※2)国家公務員の定年退職者の平均支給額は約2142万円(※3)となっています。
このような公務員の退職金ですが、以前の金額はこれより多いものでした。平成24年の人事院の調査によると国家公務員の退職給付総額は約2905万円。これに対し、民間は退職一時金と企業年金を合わせて約2547万円と公務員の退職給付が約400万円上回っていることがわかりました。民間と公務員のこの差を解消するために平成24年から公務員の退職金は段階的に引き下げられることになったのです(※4)。
さらに、平成29年にも同様に民間との格差を調査し、支給水準を約78万円引き下げることとなっています。このように公務員の退職金はおおむね5年ごとに民間との格差を減らす対策が行われているため、今後も引き下げられることも考えられます。
最後まで勤め上げれば大きな退職金が受け取れて老後の心配はいらない、というわけにはいかなくなっていると言えるでしょう。
(※2)令和3年退職手当の支給状況(総務省)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/teiin-kyuuyo02.html
(※3)令和2年度退職手当の支給状況(内閣人事局)
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/jinji_c5.html
(※4)https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/jinji_c4.html
平成27年より公務員も厚生年金に加入することに
公務員の退職後の生活設計に影響を及ぼすルール変更はほかにもあります。それが公的年金の一元化です。もともと国の年金制度は大きく分けて「基礎年金(国民年金)」と「被用者年金」の二つに分かれています。被用者年金というのは民間の会社員の場合は厚生年金です。
この被用者年金は実は厚生年金のほかに、国家公務員共済組合・地方公務員共済組合・私立学校教職員共済組合があり、4つの制度に分かれていました。それぞれのルールで保険料の徴収や給付が行われていましたが、少子高齢化などが進んでいくことや被用者(雇用されて働く人)が公平に取り扱われるように、平成27年に厚生年金に一元化されることになったのです。なお、改正があった平成27年10月より前の部分は変わらず変更前の制度から給付を受けることになります。
改正前の共済年金における「3階部分(職域分)」が厚生年金との一元化により廃止されたことに伴い新設された制度が「年金払い退職給付」です。毎月の給与や賞与(期末手当等)に保険料率を掛けたものを事業主と折半して退職まで積み立てていきます。個人ごとの積立額と受給開始までの利子の合計を給付算定基礎額といい、原則65歳からの年金給付の原資となります。給付算定基礎額はその1/2を終身年金(死亡するまで)残りの1/2は有期年金として一時金受け取り・10年受け取り・20年受け取りなど自分の希望する方式で受給することになります。
現在の積立額がどのくらいになっているかは、各共済組合から送付される「年金払い退職給付の給付算定基礎額残高通知書」「退職年金分掛金の払込実績通知書」の着圧ハガキで確認することができます。ねんきん定期便とは別に送付されるので確認してみると良いでしょう。なお、記載されている金額はあくまで平成27年10月以降の分のみです。