過去のファンドは伸びない一方、なぜか話題性で急増する新規SDGs、ESG商品
投資信託の中身を詳細に見ていきましょう。今回、発表されたデータによると、2021年9月末時点でサステナブル投資を行っている投資信託の本数は、全部で171本でした。内訳は、国内株式型が66本、国際株式型が82本、複合資産型については国内資産複合型が1本もなく、国際資産複合型が16本、国際債券型が7本です。なお純資産残高ベースでみると、
国内株式型……4114億3200万円
国際株式型……2兆9372億3400万円
国際資産複合型……1035億1300万円
国際債券型……330億2300万円
となっており、圧倒的に国際株式型に資金が集まっているのが分かります。ちなみに、国際株式型82本を合わせた純資産残高が2兆9372億3400万円ですが、このうちアセットマネジメントoneが設定・運用する「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)」の純資産残高が1兆1385億5200万円で、全体の4割近くを占めています。
設定日の傾向としては、SDGsやESGに対する世間の関心が高まってきた2020年あたりから、新規設定ファンドの増加傾向が確認できます。すでに償還されたものも含めて、各年における新規設定本数を見ると、2007年に一度盛り上がりを見せた後、サブプライムショックやリーマンショックによる金融市場の混乱を経て新規設定が低調になりました。そして、2018年から再び注目を集めるようになり、2020年、2021年に大きく伸びているのが見て取れます。これは株式市場においてSDGsやESGが話題に上り始めた時期と軌を一にしています。
注意点は、SDGsやESGの話題性で資金を集めているファンドが多い可能性があることです。グラフを見ても分かるように、サステナブル投資をテーマにした投資信託は、古くは1999年から設定・運用されています。こうした古くから運用され続けているファンドの純資産残高がほとんど伸びておらず、一方で直近に新規設定されたファンドに多額の資金が流入している傾向が見られるものの、当然のことですが、長期的な過去の運用実績を示すトラッキングレコードを持ち合わせていません。
そもそも古くから運用され、それなりにトラッキングレコードを積み重ねてきたファンドがあるにも関わらず、トラッキングレコードを持たない新規設定ファンドで運用資金を集めるのは、顧客本位ではないという気もします。