ESG投資が活発化。資金調達でも欧州がリード
先に述べたように、自動車メーカー各社はEV関連だけで数兆円規模の投資を進める。巨大な開発費を自社資金だけで賄えれば問題ないが、今後、重要になってくるのは外部資金の獲得だ。メルセデス・ベンツやボルボ・カーズなどは20年に環境関連事業に資金使途を絞った「グリーンボンド(環境債)」を発行し、資金調達をすでに実施。企業への投資でグローバルトレンドとなっているのが地球環境関連や社会問題への対応などを考慮するESG投資といえる。主要国・地域の資産運用会社などで構成する世界持続的投資連合(GSIA)によると、20年の世界のESG投資額は35.3兆ドル(約3900兆円)だったことからも一過性のブームではないことが分かる。
欧州はESG投資で米国とともに世界をリードする。そんな中で、EUは投資面からもEVを推進する姿勢を鮮明にしている。欧州委員会は21年4月、EUが26年以降、EVなど二酸化炭素(CO2)を排出しないゼロエミッション車(ZEV)以外の車を、環境に配慮した「サステナブル投資」の対象から除外することを発表。それはEUではエンジン車とHVだけでなく、プラグインハイブリッド車(PHV)も、環境に配慮した投資対象とはみなされなくなることを意味する。26年以降はEV以外も欧州内で販売は継続できるが、ESGを重視する投資家からの投資が得られにくくなる可能性があるということだ。
脱炭素化の流れの中で、欧州では法規制や投資環境の整備を含めEV化を半ば強制的に進めていく。その中で自動車メーカー各社はEV関連に巨額の投資を進めていきながら、欧州だけでなく、域外でのマーケットシェア拡大も狙う。本格的にEVの普及が拡大するとみられる30年代以降に向け、その流れが欧州勢の得意とする国際標準となり欧州自動車メーカーが世界を席巻していくのか。それとも日米の既存自動車メーカーや米国のテスラや中国をはじめとする新興企業が席巻するのか。100年に一度といわれる、自動車の大変革期において欧州のかじ取りに注目していく必要がある。
執筆/鎌田 正雄
合同会社ユニークアイズ代表。大手産業総合紙で記者経験を積み、主に自動車業界や中小企業など製造業の取材に従事し、2021年に独立。「ものづくりのまち」で有名な東京都大田区生まれで町工場の息子。はやりのポイ活で集めたポイントを原資に少額ながら超低リスク投資を始めた。