60歳以前で資産を受け取れる3つの例外

iDeCoで例外的に60歳以前の年金資産引き出しが可能なのは次の3パターン。

(1)加入者が死亡した場合
(2)加入者が一定以上の障害状態になった場合
(3)脱退した場合

それぞれ詳しく見ていこう。

(1)加入者が死亡した場合

iDeCoの加入者、あるいは運用指図者が死亡した場合、遺族は『死亡一時金』を請求できる。なお、運用指図者とは掛金を拠出しておらず、資産の運用だけを行っている人を指す。

受取人は加入者本人があらかじめ親族のなかから指定するか、次の優先順位によって決まる。

1.配偶者
2.加入者の収入によって生計を維持していた子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹
3.加入者の収入によって生計を維持していた、2以外の親族
4.2以外の子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹

もし子どもが2人など同じ順位の人が複数いる場合は、均等に分配される。

また、死亡一時金は加入者の死亡後3年以内であれば、法定相続人1人あたり500万円までが非課税。ただし、この非課税枠は勤務先などから受け取る死亡退職金と共有な点は覚えておきたい。

(2)加入者が一定以上の障害状態になった場合

傷病によって一定の高度障害になった場合、傷病から1年6ヵ月経過後に『障害給付金』を請求できる。対象となるのは次の4パターン。

・障害基礎年金の受給者
・身体障害者手帳(1級から3級)の交付を受けた人
・療育手帳(重度の者に限る)の交付を受けた人
・精神障害者保健福祉手帳(1級または2級)の交付を受けた人

給付金の受取方法は年金方式か一時金、あるいはその併用を選べる。また、どの方法を選んでも受け取る資産は非課税だ。

なお、年金として受け取る場合、受け取り前の資産は継続して運用される。もし将来の受給額を減らしたくないのであれば、この時点で定期預金など、元本保証型の低リスク資産へ買い換えることも検討しよう。

(3)脱退した場合

最後に、iDeCoを脱退する場合。iDeCoは原則中途解約できないが、条件さえ満たせばその時点での資産を『脱退一時金』として受け取ることが可能だ。ただし、中途解約は非常に厳しく、以下の5つすべてを満たす必要がある。

1.国民年金保険料の納付を免除されていること
2.確定拠出年金の障害給付金の受給権者でないこと
3.通算拠出期間が3年以下、又は個人別管理資産額が25万円以下であること
4.最後に企業型確定拠出年金、又はiDeCo(個人型確定拠出年金)の資格を喪失した日から2年以内であること
5.企業型確定拠出年金の加入者資格喪失時に脱退一時金を受給していないこと

簡単に説明すると、2年以内に国民年金保険料の納付が免除されており、実際に掛金を拠出している期間が3年以下、あるいは積み立てた年金資産が25万円以下であること。さらに確定拠出年金の障害給付金や企業型DCの脱退一時金を受け取っていない人のみ、iDeCoの中途解約が認められている。

例えば、国民年金保険料の免除があるのは自営業者などの第1号被保険者のみなので、会社員や公務員は当てはまらない。所得が減って生活が苦しくなったフリーランスの人など、該当者はかなり限られているといえるだろう。