DCの運用商品をより高品質なものにするために必要なこと

  • パッシブ:ETFの活用

まずパッシブについては、より規模が大きく信託報酬も低いETFをもっと活用できるようにすべきではないか。最近は日系運用会社の経営努力によりDCパッシブの信託報酬がかなり下がってきたが、規模ではグローバルでETFを提供する大手に敵うはずはない。規模で敵わない中、コストで対抗している状況はどこかで無理が生じていると考えるのが自然だろう。先日、日本経済新聞でも報道されたが、パッシブの低コスト競争は長期的には運用会社の競争力を損なう可能性がある。

一方、法律上はDCでETFを活用することはできるが、最低売買単位があることから、ほとんど活用されていない。確かに売買単位があると1円単位の調整ができず実務的には活用できないが、何らかの形での活用ができないだろうか。より低コストなグローバル・スタンダードのETFを加入者が利用しやすいようにすることは、受託者責任を全うすることにつながると思う。

  • アクティブ:ESGの視点の追加

あまりリスクを取っていない(アクティブ・シェアが低い)アクティブを除外し、それが高いアクティブに入れ替えることで、アクティブのクオリティを高めることが企業の課題だろう。一方、それだけでは加入者はアクティブに資金を振り向けないだろう。資金を振り向かせるには“共感”が必要であり、そのきっかけになるのがESGではないか。ESGの視点が直ちに超過収益につながるかどうかは侃々諤々の議論があり、まだ判明していないが、ESGを取り入れることで企業評価が多面的になり、より長期的なトレンドに基づいた銘柄選択が可能となるだろう。ESGのコンセプトに加入者が共感すれば、結果として長期保有につながる可能性もあり、加入者にもメリットがあるだろう。

  • さらなる分散:オルタナティブの活用

日本のDCでは、伝統的資産である株式と債券にしか分散していないことが多い。債券はグローバルで低金利であり、高いリターンが期待できないどころか、金利上昇時にはマイナスになる可能性すらある。リターン・ドライバーとして重要な株式も、ここ数年の大幅上昇で割高感がある。つまり、株式と債券だけの分散投資ではその限界が露呈するのではないか。これを回避するには、債券ではクレジット、株式ではファクター等、他のリターン源泉を取り入れることが一つのソリューションになるかもしれない。

また、そもそも株式と債券だけでなく、不動産やヘッジファンドのようなオルタナティブにも分散投資することでさらなる安定化を図れるようにすべきではないだろうか。特に、足元のようにインフレ懸念がある中では、インフレ連動債やコモディティなどをインフレ・ヘッジとしてラインナップに加えることも一案だろう。