入手した評価情報を利用する際の留意点

評価情報の信頼度の確認を

せっかく入手した評価情報ですが、そのまま信用して利用するのは危険です。評価機関の考え方や方針、評価手法あるいは評価体制の制約などにより、必ずしも精緻な調査分析に基づく中立的かつ客観的な評価結果とは考えられない情報も多く存在しています。

評価情報の信頼度は以下の点から確認可能と考えます。

(1) 定量評価情報
過去の実績を比較するには、その物差しに何を使うかも重要です。リターンの大きさのみならず、シャープレシオなどのリスク調整後リターンでも比較されているリサーチ情報の方が信頼度は高いでしょう。

 ①ベンチマーク比較
対象ファンドがベンチマーク以外の市場指数と比較されている場合には注意が必要です。どんな指数が利用されていても必ず何らかのバイアスがかかる結果となっているでしょう。なお、株式に投資する投資信託の場合には、比較対象となる指数が「配当込み指数」であることはご確認ください。 TOPIXなどの主要指数には配当を含んでリターンを計算している指数と配当を含まない指数があります。配当を含まない指数を用いると、配当利回りの分だけハードルが低くなり、ファンドに有利な形での指数比較となります。

② ユニバース比較
どんなファンド群と比較するのかで全く異なる結果となりますので、分類方法には細心の注意が必要です。ファンドの運用力の証として過去の実績を見たいわけですから、運用力では変えられない商品性の違いは排除する、つまり商品性の異なるもの同士はできる限り比較しないことが重要です。以下の特徴を一つでも有するユニバース比較データは、参考にさえならないと考えます。

アクティブファンドとインデックスファンドが同じユニバースで同じ物差し(例:リターンの大きさ)で比較されている。
アクティブファンドとインデックスファンドでは商品性(運用目標)が異なるため、分類を別にし、アクティブファンドは(リスク調整後)リターンの大きさで、インデックスファンドは市場指数との連動性の高さでそれぞれ比較すべきでしょう。

・ 投資対象の違いによる分類が精緻でない。
投資対象という商品性の異なるものは分類を分けることが必要です。例えば、アジア株ファンドという分類の中に、広域アジア株ファンドも、中国株ファンドも、ASEANファンドも混在しているようなケースでは、ファンドの運用力ではなく、各株式市場の過去リターンのランキングになってしまいます。

・ 海外資産に投資するファンドで、為替ヘッジの有無や通貨別に分類していない。為替ヘッジやその他通貨運用の方針という商品性の違いでも分類が必要でしょう。例えば、同じ分類内で米国債券ファンドでも対日本円でヘッジするものとしないものを比較したり、通貨選択型ファンドでドル建てコースとブラジルレアル建コースを比較するケースでは、ファンドの運用力に関係なく為替レートの動向で成績の優劣がほぼ決まってしまいます。

こうした緻密さに欠けるユニバース比較は評価機関でもメディアの報道でも行われることがあります。中には何らかの意図を持って行われていると思われるものもありますので、注意が必要です。

今年も暮れて年が明けますと、“2021年に高いリターンをあげたファンド”といったリストが作られ発表・報道されるでしょう、そのリストでは、アクティブファンドでもインデックスファンドでも、どんな投資対象のファンドでも、為替ヘッジ有無に関わらず、全てのファンドが対象となっている可能性があります。上位ファンドに既に投資されている方や、運用に関わっている方にはその受賞は素晴らしいニュースでしょう。しかしながら、これから投資するファンドを選ぶ方にとっては、「あまり役に立たない定量評価情報の中でも、特に参考にならない評価情報」と考えます。