過去6回にわたり、「“優れた”アクティブファンドの選び方」を説明してきました。“優れた”アクティブファンドに求められる今後の運用成績は、過去の運用実績を定量評価しても予測することは困難なため、運用実績以外を定性評価することが重要であることをお話ししました。また多岐にわたる調査と分析が必要でありかつ複雑になりがちである定性評価手法を、一般の投資家の皆様にも実行していただけるよう、シンプルに編集・構成してご提言しました。その中で筆者が考える評価項目とそれぞれの判断基準をご説明しました。

とは言うものの、いくらシンプルな評価手法を採用しても、「定性評価は大変だ…」あるいは「自信がない…」と思われる方もいらっしゃるでしょう。今回は、自ら行うのではなく評価機関が行う定性評価結果を利用した“優れた”アクティブファンドの選定についてお話しします。はじめに、どのようにして参考となる評価情報を入手できるのかご説明します。次に、入手した評価情報が信頼に足るかどうかの見極め方を考えます。

なお、以下でご説明する主要ファンド評価機関の状況は国内の8評価機関(注1)のホームページなどに掲載されている情報に基づいて記述しています。

(注1)格付投資情報センター(”R&I“)、大和ファンドコンサルティング、日興リサーチセンター、野村総合研究所、野村フィデューシャリー・リサーチ&コンサルティング(”NFRC“) 、三菱アセットブレインズ、モーニングスター、リフィニティブ・リッパー、(以上五十音順)の8社

評価機関による評価情報を入手するために

入手困難な定性評価情報は販売会社や運営管理機関に問い合わせを

一般の投資家の皆様がアクティブファンドの評価情報を入手する方法について、(1)運用成績の定量評価情報と、(2)運用成績以外の定性評価情報に分けてご説明します。

(1) 定量評価情報
本稿でこれまで繰り返しお話ししました通り、アクティブファンドの選定においては過去の運用実績は頼りになる尺度ではありません。しかし、当てにならないとは言っても、過去の成績が酷いファンドを敢えて選ぶ気にはならないでしょうから、少なくとも確認はしておきたいと思われる方が大半ではないでしょうか。

参考にすべき評価情報は2種類あります。比較対象が異なります。

①ベンチマーク比較:ベンチマークやその他運用目標とする市場指数等との比較
多くの場合、対象ファンドの運用報告書(含む月次/四半期報告書)に掲載されています。ただし、比較対象となっている市場指数は、当該ファンドが認めた運用目標/ベンチマークではなく、あくまで参考情報としての比較対象に過ぎないこともあります。必ずしも客観的なあるいは公平な比較にはなっていない可能性には注意が必要です。また、ベンチマークやその他の市場指数とは比較を行わないファンドもありますが、そのようなファンドではベンチマーク比較は行うことはできません。

②ユニバース比較:競合ファンド群との比較
ファンドの運用成績ランキンングであるユニバース比較は、評価機関のいくつかがそのHP上などで評価情報を公開しているのみならず、新聞や雑誌その他メディアでも数多く行われています。しかしその信頼度は玉石混交です。本稿の後半で見分けるポイントをご説明します。

(2) 定性評価情報
本稿でご説明してきましたようにアクティブファンドの選定において極めて重要な定性評価情報ですが、入手は容易ではありません。一般の投資家の皆様が利用できる可能性が最も高い方法は、対象ファンドを販売する会社(確定拠出年金向けファンドでは運営管理機関)へのリクエストであると思われます。

定性評価情報を入手しにくい理由は以下の通りです。

・ 定性評価を行っている評価機関が少ない
国内の投資信託の定性評価を行っている評価機関は8社中5社のみです。

・ 定性評価のみでレーティング付与している評価機関はさらに少ない
上記5社のうちの3社は、あくまでも運用実績の定量評価と合わせた“総合評価”を行うために定性評価を行い、レーティングは総合評価の結果のみ付与しています。定性評価だけによるレーティングを付与している評価機関は2社のみです。

・ 定性評価結果(含むレーティング)を一般に公開している評価機関はほぼゼロ
定性レーティングを付与している2社のいずれも評価結果は一般の投資家向けには公開していません。ただし、定性評価も含んだ総合評価を行っている評価機関3社の中には、一部のファンドの総合評価レーティングをそのH P上で無償開示しているところもあります。

なお、現在では投資信託を販売する金融機関の多くが、取り扱い投資信託の選定や管理のために外部評価機関による定性評価情報を利用しています。そのため、一般の投資家の皆様が定性評価情報を入手するには、お取引先の金融機関にリクエストすることも有力な選択肢と思われます。例えば、定性レーティングを付与している上記2社のうちの1社は、販売会社の依頼を受けて定性評価を行っているため、その評価機関の評価レポート等はリクエストがあれば販売会社よりお客様に対して提供されています。また、確定拠出年金では、各運営管理機関が取り扱う商品選定に際して同様に定性評価情報を利用しているため、運営管理機関にリクエストするのも一つの方法と思われます。

(3) その他:ファンド表彰の結果
毎年いくつかの団体による優秀ファンドの表彰が行われ、その結果が大々的に発表されるだけではなく、運用会社や販売会社がその受賞をマーケティング目的で宣伝しますので、対象ファンドが表彰された場合には、受賞理由等の情報は入手しやすいでしょう。しかし、後述の通り受賞がこれからのファンド選定上有意義な情報と考えられるかについては疑問が残ります。